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「この建物に9階はありません」──エレベーターに残る“存在しない階”の話

佐藤直哉(Naoya sato-)
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はじめに

「9階へどうぞ」

女性はエレベーターを降り、そこで買い物をしました。

ところが後になって店員に尋ねると、

「9階で買ったんですけど」

「9階?」

「はい」

「お客様、この建物は8階までですよ」

さっきまで確かにいた場所が、最初から存在していなかった。

そんな不思議な話があります。

これは実話ではありません。

1960年に放送されたアメリカのドラマ『トワイライト・ゾーン』の一編、「The After Hours」で描かれた物語です。

ところが、この「存在しない階」という話。

60年以上前のフィクションなのに、今でも妙に現実味があります。

なぜなら現実のビルにも、

「ある人には行けて、ある人には行けない階」

が本当にあるからです。

※本記事は筆者個人の感想をもとにエンターテインメント目的で制作されています。

「そんな階、押せませんけど」

エレベーターに乗った人が、最上階のボタンを押します。

「……あれ?」

反応しません。

そこへ別の人が乗ってきます。

カードをかざします。

ピッ。

すると、さっきまで反応しなかったボタンが光ります。

「そこ、行けるんですか?」

「ええ」

これは怪談ではありません。

マンションやオフィスでは、セキュリティのために特定の人しか行けない階を設定することがあります。

同じ建物なのに、

ある人には普通の階。
別の人には行けない階。

それだけで、少し「秘密のフロア」らしく見えてきます。

「カードをかざしてください」

昔の怪談なら、

「決められた順番でボタンを押すと秘密の階が現れる」

となりそうなところです。

現実はもう少し普通です。

「押せません」

「カードをかざしてください」

ピッ。

「あ、押せた」

現在のエレベーターには、カードや鍵、PINコードなどで利用できる階を制限する仕組みがあります。

つまり、

認証した人だけに使える機能

が本当にあるわけです。

事情を知れば、ただのセキュリティです。

でも何も知らない人から見れば、

「さっきまで使えなかった階が、突然使えるようになった」

ように見えます。

都市伝説が生まれそうな光景です。

「13階がない?」

今度は、本当に番号が消えている話です。

エレベーターを見ると、

12階。

その次が14階。

「13階は?」

「ないみたいですよ」

もちろん、床そのものが消えたわけではありません。

欧米では13を不吉な数字として避け、13階という表示を使わない建物があります。

香港などでは、4を避ける建物もあります。

「3階の次が5階?」

「そうみたいですね」

さらに13、14、24など、複数の番号が飛ばされる例もあります。

不思議なのは、建物は何も変わっていないことです。

変わったのは、人間が付けた数字だけ。

それなのに、

「存在しない階」

が一つできあがります。

「順番どおりに押すと、別世界へ行ける」

エレベーターには、こんな都市伝説もあります。

「エレベーターゲーム」

一人で乗り、

「4階」

「2階」

「6階」

「また2階」

と、決められた順番で移動していく。

最後まで正しく進むと、

別の世界へ行ける。

もちろん、本当に異世界へ行ける証拠はありません。

では、なぜエレベーターなのでしょう?

階段なら、自分がどこを歩いているか見えます。

でもエレベーターは、

ボタンを押す。

扉が閉まる。

途中は見えない。

そして別の場所で扉が開く。

私たちは普段、

「5階」と表示されれば、そこを5階だと信じています。

だからこそ、

「いつもと違う場所で扉が開いたら?」

という話が怖くなります。

毎日使うものだからこそ、少しの異変がよく目立つのです。

最後に

たぶん、明日もエレベーターはいつも通りです。

見慣れた数字が並び、押した階で扉が開く。

何も起きません。

でも、もしそこに昨日までなかった「9」が一つ増えていたら。

「押さないほうがいい」

そう思うはずです。

そして同時に、

「押したらどうなるんだろう?」

とも思うはずです。

考えてみれば、都市伝説というのは少し意地悪です。

危ない場所を教えてくれるふりをして、最後には必ず、

「絶対にやるなよ」

という、かえって試してみたくなる一言を最後に残します。

だから“存在しない9階”の話も、なかなか消えないのでしょう。

本当に怖いのは9階があることではなく、ないと言われた瞬間に確かめたくなることなのかもしれません。

ABOUT ME
佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
文章を書くことを楽しむ自称・小説家です。
歴史や文化、日々の暮らしに潜む雑学を題材に、無駄雑学などの小噺を発信しています。
どうぞ、ふらりと覗いてみてください。
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