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なぜ石なのに5000kmも海を旅できるのか? 軽石の意外すぎる正体

佐藤直哉(Naoya sato-)
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はじめに

海から、水が消えた

夜の海。

ヨットのライトの先に、

水面がありません。

あるのは、

見渡す限りの灰色の石。

船底では、

ゴロゴロ。

ガリガリ。

石が船体をこすっています。

船員が身を乗り出します。

「これ、全部浮いてるの?」

火山から大量の軽石が出ると、

海面を石が埋め尽くすことがあります。

これが、

「軽石筏」です。

2019年にトンガ近海で確認されたものは、

最初の段階で約195平方キロメートル。

海を覆えるほど石がある。

なのに、

ほとんど沈んでいません。

石は、

いつから水に浮けるようになったのでしょうか?

※本記事は筆者個人の感想をもとにエンターテインメント目的で制作されています。

沈めても、戻ってくる

石を水へ落とします。

普通なら、

そのまま底に沈みます。

ですが軽石は違うのです。

ぽちゃん。

水面に浮きあがります。

指で沈める。

手を離す。

また浮く。

もう一度。

やっぱり戻ってきます。

「……石って、こんな動きしたっけ?」

軽石の中には、

無数の穴があります。

火山のマグマに含まれていたガスが膨らみ、

そのまま冷えて固まった跡です。

岩と空洞を合わせた全体の密度が水より小さければ、

石でも浮きます。

これで、

浮く理由は分かりました。

ただ、

手に持った軽石を見ると、

別の疑問が残ります。

これだけ穴だらけなら、水が入るのではないでしょうか?

水は入る。それでも沈まない

翌日。

水槽の軽石は、

まだ浮いています。

数日後。

まだ浮いています。

表面は、

とっくに濡れています。

穴の中にも、

少しずつ水が入り込んでいます。

それを見た研究者なら、

こう言いたくなります。

「まだ沈まないのか」

軽石は、

水を完全にはじいているわけではありません。

複雑な穴の奥に、

空気が取り残されます。

そのため、

水が入ってもすぐには浮力を失いません。

条件によっては、

何か月も海を漂えます。

沈まない石ではなく、

沈むまでが妙に遅い石なのです。

では、

数か月も海に浮いていたら、

どこまで行けるのでしょうか?

石が1300キロ旅してきた

2021年。

沖縄の港。

朝、

船を出そうとすると、

海面が灰色です。

岸にも、

船の間にも、

大量の軽石。

昨日までなかった石が、

港を埋めています。

「近くで噴火したのか?」

そう思います。

ところが、

この軽石が生まれたのは、

小笠原諸島の海底火山、

福徳岡ノ場。

沖縄から約1300キロ離れています。

噴火で生まれた軽石は、

海流に乗り、

およそ二か月かけて沖縄や奄美方面へやって来ました。

その後、

本州側でも確認されています。

海に浮くだけで、石は1300キロ先までやって来ました。

しかも、

長く海にいた石は、

出発したときと同じ姿ではありません。

到着したころには、住民が増えていた

噴火直後の軽石。

灰色。

表面には、

ほとんど何もありません。

数か月後。

海から拾った軽石を、

ひっくり返します。

藻。

貝。

フジツボ。

ゴカイ。

小さな生き物が、

びっしり付いています。

「いつの間に乗ったんだ?」

2006年にトンガ周辺で生まれた軽石では、

80種を超える生物が確認されました。

その軽石は、

5000キロ以上移動しています。

火山を出たときは、

ただの石。

旅の途中で、

生き物を運ぶ船になりました。

ただし、

この船には乗客名簿がありません。

乗せる相手は選ばない

軽石の表面に、

サンゴの仲間が付きます。

藻も付く。

貝も付く。

そのまま海流に流され、

別の島へ向かいます。

見た目だけなら、

自然が作った小さな輸送船です。

研究者が付着した生物を見て、

こう思うかもしれません。

「これは運んで大丈夫なやつか?」

軽石は、

そんな判断をしません。

その土地では歓迎されない生物や、

外来種になり得る生物まで、

一緒に運ぶ可能性があります。

サンゴも乗る。

困る生物も乗る。

空いていれば、だいたい乗れます。

そして次は、

軽石そのものが人間の船を困らせます。

一個の石では問題ないが大量なら止まる

船が、

急に調子を崩します。

岩にはぶつかっていません。

座礁もしていません。

機関室で確認すると、

海水の取入口に、

小さな軽石が詰まっています。

船員がのぞき込みます。

「原因、石?」

船のエンジンなどは、

冷却のために海水を取り込みます。

大量の軽石が海面を覆うと、

海水と一緒に石まで吸い込まれ、

取入口を塞ぐことがあります。

2021年に日本へ大量漂着した際にも、

漁業や船の運航へ影響が出ました。

一個なら、

手のひらに乗る石です。

集まると、

人間の船の方が動けなくなります。

それでも、

軽石が海を占領し続けるわけではありません。

最後は、ちゃんと沈む

誰もいない海。

一つの軽石が、

波に揺れています。

何か月も浮きました。

遠くまで流れました。

生き物も乗せました。

船も困らせました。

内部には、

その間ずっと水が入り続けています。

やがて、

空気が減り、

浮力を保てなくなります。

もし誰かが見ていたら、

たぶんこう言います。

「あ、沈んだ」

軽石は、

永遠に浮く石ではありません。

最後には、

ちゃんと海の中へ消えていきます。

ただし、

その前に5000キロ以上旅することもある。

石としては、

ずいぶん遠くまで来ました。

本人は、一歩も歩いていないのですが。

最後に

海岸を歩いていて、

足元に軽石が落ちていたとします。

見た目は、

ただの穴だらけの石です。

拾っても、

どこから来たのかは分かりません。

隣を歩く人なら、

そのまま蹴っていくかもしれません。

「ただの石でしょ?」

たしかに、

今はただの石です。

でも、

その石が少し前まで海の上にいて、

何百キロも流され、

小さな生き物を乗せていた可能性はあります。

次に軽石を拾ったときは、

どこから来たのか、

少しだけ気にしてみてください。

もしかすると、あなたより旅慣れた石かもしれません。

ABOUT ME
佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
文章を書くことを楽しむ自称・小説家です。
歴史や文化、日々の暮らしに潜む雑学を題材に、無駄雑学などの小噺を発信しています。
どうぞ、ふらりと覗いてみてください。
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