ショートストーリー
PR

冷たい空からの解放【ショートストーリー】

佐藤直哉(Naoya sato-)
<景品表示法に基づく表記>当サイトのコンテンツ内には商品プロモーションを含みます。

影の中からの脱出

会議室の空気が鉛色の窓外と同様に重く、圧縮されたかのように息苦しい。

高野の耳に突き刺さる上司の声は冷たく、鋭い。

「高野、このプロジェクトの遅れは全て君の責任だ。どうしても期限を守れないのか?」

その言葉が彼の心に深く突き刺さる。

携帯を震える手で取り出すと、同僚からのメッセージが画面を照らす。

「大変だったね。でも、彼は誰にでも厳しいんだ。君だけじゃないよ」

ほんの少しの慰めが、彼の心に静かな波紋を投げかける。

翌朝、高野は地元のカフェで、偶然隣に座った老人と意味深な会話を交わすことになる。

周囲は賑やかながらも、老人の声だけが彼の心に響く。

「若い人よ、怒りは心を曇らせる。私もかつては同僚との衝突に悩まされたが、彼の個人的な事情を知ると、怒りがすっと消え去ったんだ」

その言葉が高野の心に深く沈む。

彼は自分自身を見つめ直す決心をする。

家に帰ると、玄関で待ち構えていたのは、彼の娘だった。

彼女は学校で描いた絵を持っていて、「パパ、これ見て!パパが笑ってるのを描いたの。だってパパの笑顔が好きだから!」と無邪気に話す。

その言葉が高野の凍りついた心を溶かし、怒りは霧のように消え去った。

彼は娘を抱きしめ、彼女の手が描いた笑顔に心からの安らぎを感じる。

翌日、オフィスへ向かう途中の高野は、まるで運命を変えるかのような決意を胸に秘めていた。

上司のデスクに直接向かい、「昨日は申し訳なかったと思います。これからは期限を守ること、そしてもっとお互いの立場を理解することを心がけます」と宣言する。

上司の表情は一瞬驚きに変わったが、やがて穏やかな笑顔になり、

「その心意気、評価するよ。こちらも見直す必要がある。共に頑張ろう」と応えてくれた。

その瞬間、オフィスの空気が一変し、高野は自分自身の変化を実感する。

そして、外の空が次第に晴れ渡り、新たな日の光がオフィスに満ちていく。

高野は前を向き、希望を胸に新しい一日を迎えた。

ABOUT ME
佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
普段は小説家たまにブロガー
物語を生み出す事に楽しみを見出して様々な作品を作り出しています。
特にショートショートのような短い小説を作ることに情熱を注いでいます。
楽しんで頂ければ嬉しく思います。
記事URLをコピーしました