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幽霊は本当にいる? ハンプトン・コート宮殿で起きた奇妙な実験

佐藤直哉(Naoya sato-)
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はじめに

30分後、また倒れた

1999年。

ハンプトン・コート宮殿で、

一人の女性観光客が突然倒れました。

場所は、

宮殿の長い廊下です。

体調を崩しただけなら、

それほど珍しい話ではありません。

ところが約30分後。

別のツアーに参加していた女性も、

同じ場所で倒れました。

二人に面識はありません。

参加していたツアーも別です。

共通していたのは、

倒れた場所だけでした。

しかもそこは、

昔からある名前で呼ばれていました。

その名も

「幽霊の回廊」

です。

※本記事は筆者個人の感想をもとに制作されているため、正確ではない情報の可能性があります。また、本文中の人物名については、文章を読みやすくするため敬称を省略しています。

王妃が走ったという話

なぜ、

そんな名前が付いたのでしょうか?

この廊下には、

一人の王妃にまつわる話が残っています。

1541年。

ヘンリー8世の5番目の王妃、

キャサリン・ハワードは、

不貞の疑いをかけられました。

伝説では、

部屋に閉じ込められていたキャサリンが、

見張りを振り切って廊下へ飛び出したとされています。

向かった先は、

ヘンリー8世がいる礼拝堂。

王に直接会って、

助けを求めようとしたのでしょう。

しかし途中で衛兵に捕まり、

泣き叫びながら連れ戻された。

それ以来、

この廊下では、

女性が泣き叫びながら走る姿が目撃されるようになった――。

そんな話が残っています。

これだけ聞けば、

いかにも幽霊が出そうです。

ところが、

この話には大きな問題があります。

走った記録が見つからない

キャサリンが不貞を疑われたこと。

その後、

取り調べを受けたこと。

ヘンリー8世が、

大きな衝撃を受けたこと。

そこまでは、

当時の記録から確認できます。

しかし、

あの有名な場面が出てきません。

キャサリンが部屋を抜け出した。

廊下を走った。

礼拝堂へ向かった。

衛兵に捕まった。

これらを裏付ける同時代の記録が、確認できないのです。

現在の宮殿側も、

この出来事を史実として断定せず、

「伝説によれば」と紹介しています。

つまり、

幽霊が繰り返しているとされる出来事そのものが、

後世に作られた話かもしれません。

では、

幽霊の回廊も、

ただの作り話なのでしょうか?

そう簡単には終わりませんでした。

実際に人を歩かせてみた

2000年。

心理学者たちが、

ハンプトン・コート宮殿で実験を行いました。

参加したのは678人。

幽霊を信じている人もいれば、

信じていない人もいます。

研究者たちは参加者に、

宮殿の中を実際に歩いてもらいました。

その途中で、

何か変わった感覚があれば、

その場所を地図に記録してもらいます。

報告されたのは、

寒気。

めまい。

奇妙な音。

誰かが近くにいるような感覚。

急に湧いてくる強い感情。

さまざまでした。

実際に、

かなりの人が何らかの異常な感覚を報告しました。

ただ、

研究者が注目したのは、

何人が感じたかではありません。

どこで感じたかでした。

なぜか場所まで重なった

もし、

それぞれの参加者が勝手に想像していただけなら、

異常な感覚を覚える場所も、

宮殿のあちこちに散らばりそうです。

ところが、

実際には偏りがありました。

以前から、

奇妙な体験が多く報告されていた場所があります。

そこでは、

実験に参加した人たちも、

異常な感覚を報告しやすかったのです。

しかも参加者には、

過去にどの場所で目撃談が多かったのかを、

詳しく知らせていませんでした。

昔の目撃談と、

現代の実験。

時代も人も違います。

それなのに、

「何か変だ」と感じる場所は重なりました。

では、

その場所には何があるのでしょうか?

調べたのは幽霊ではなく建物

研究者たちは、

宮殿の環境も調べました。

温度。

空気の流れ。

照明。

磁場。

すると、

異常な感覚が多く報告される場所には、

環境にもいくつか特徴が見つかりました。

場所によって暗さが違う。

冷たい空気が流れ込む。

温度が変わる。

磁場にも局所的な変化がある。

こうした環境が、

幽霊を生み出していると証明されたわけではありません。

ただ、

理由の分からない変化を体で感じれば、

人は自然に周囲を気にします。

急に首筋が冷える。

後ろから物音がする。

振り返る。

誰もいない。

そこで、

この廊下にまつわる話を知っていたらどうでしょう。

ただの冷たい風にも、

別の意味が付きます。

「今、誰か通った?」

同じ感覚でも答えは変わる

同じ廊下を歩き、

同じ冷気を感じたとしても、

全員が同じことを考えるとは限りません。

ある人は、

「古い建物だから隙間風だろう」

と考えます。

別の人は、

「今、後ろに誰かいた気がする」

と感じます。

最初に受け取った刺激は、

それほど違わないのかもしれません。

違うのは、

その感覚を何だと考えるかです。

しかもハンプトン・コート宮殿には、

答えになりそうな物語が、

すでに用意されています。

若くして処刑された王妃。

泣き叫びながら走ったという伝説。

そして、

「幽霊の回廊」という名前。

何か妙な感覚さえあれば、

あとは人間の頭が、

その続きを作れます。

最後に

何百年も残っていたもの

キャサリン・ハワードが、

本当にこの廊下を走ったのか。

今も分かっていません。

もちろん、

幽霊が本当にいるのかどうかも分かりません。

それでも興味深いことがあります。

昔から奇妙な体験が報告されていた場所で、

現代の実験参加者も、

同じように「何か変だ」と感じました。

だとすれば、

この宮殿で繰り返されてきたものは、

キャサリンの最期そのものではないのかもしれません。

暗い廊下を歩く。

急に冷たい空気に触れる。

どこかで音がする。

思わず振り返る。

しかし、

そこには誰もいない。

その瞬間、

昔から残っている幽霊の話が、

目の前の空白に入り込みます。

結局、ハンプトン・コート宮殿に残っていたのは、
幽霊そのものではなく、
人が「ここには何かいる」と感じてしまう条件だったのかもしれません。

だからこの廊下では、
幽霊が見つからなくても、
幽霊の話だけは終わらないのかもしれません。

ABOUT ME
佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
文章を書くことを楽しむ自称・小説家です。
歴史や文化、日々の暮らしに潜む雑学を題材に、無駄雑学などの小噺を発信しています。
どうぞ、ふらりと覗いてみてください。
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