小噺ショート
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法廷の光、心の闇【ショートショート】

佐藤直哉(Naoya sato-)
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勝つたびに、失うものが増えていく

弁護士のヤマダは、法廷での勝利を重ねるたびに、心が少しずつ擦り減っていくのを感じていた。

ある日、精神科医を訪れ、思い切ってこう告げた。

「私が守るべきは真実であるべきなのに、実際は法律を守るために戦っているのです」

医師は静かにうなずき、彼に問いかけた。

「では、なぜそれほどまでに自分を追い詰めているのですか?」

ヤマダはしばし考え込んだ後、苦笑を浮かべて答えた。

「法律を信じているからです。しかし、信じるものが正しいとは限らない。だからこそ、私はこの仕事をやめることができないんです」

医師は無言で時計を見つめ、何も言わなかった。

その沈黙が、ヤマダの胸に重くのしかかった。

診察室を出たヤマダの足取りは、まるで地面に引きずられるように重く、外の光は彼にとって遠く、手の届かない場所に感じられた。

そして、彼は自分の心がもう戻らない場所にたどり着いたことを、初めて実感した。

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佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
小説を書いていたはずが、いつの間にか「調べたこと」や「感じた違和感」を残しておきたくなりました。
このサイトでは、歴史の中に埋もれた謎や、日常でふと引っかかる“気になる話”をもとに、雑学記事、4コマ漫画、風刺ショートショートとして発信しています。
テーマはちょっと真面目。
でも、語り口はすこし皮肉で、たまにユーモア。
「なんかどうでもよさそうなのに、気になる」
──そんな話を集めて、掘って、遊んでいます。
読んだ人の中に“ひとつくらい、誰かに話したくなる話”が残れば嬉しく思います。
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