楽観と悲観の果てに【ショートショート】
信じた道の先に待つのは、同じ行き止まり
「未来ってのは、信じる者だけに微笑むんだよ!」
タナカは今日もその根拠のない自信を見せつけていた。
資料なしでプレゼンに挑む彼の姿は、まるで冒険家のようだ。
彼の哲学はシンプル。
「失敗しても、次があるさ」
それが彼のモットーだった。
一方、ナカムラは険しい顔つきでタナカを見つめていた。
「そんな無計画で本当にうまくいくのか?」
彼の問いかけは真剣そのもの。
山積みの資料は、彼が全てのリスクを考え、どんな質問にも答える準備をした証だった。
しかし、その準備は、彼を過剰なまでの慎重さへと駆り立てていた。
プレゼンが始まる。
タナカは自信満々で軽快に話し始め、聴衆を笑わせる。
しかし、具体的な計画がないことが明らかになると、聴衆の態度が冷え込み始めた。
「具体的にはどうするんですか?」という質問に、タナカは「ま、その時に考えるさ!」と楽観的に返答したが、その返事は誰の心にも響かなかった。
ナカムラが登壇する。
彼のプレゼンは緻密で、完璧を追求した内容だった。
彼はすべての質問に対して的確に答えたが、その過剰なまでの慎重さが聴衆を疲れさせていた。
彼の声が次第に単調になり、聴衆の中には居眠りを始める者も現れた。
プレゼンが終わった後、タナカは「次があるさ!」と無邪気に笑い、ナカムラは黙って資料を片付け始めた。
だが、彼の表情には落胆が滲んでいた。
数年後、タナカは新しいプロジェクトに再び挑戦していた。
彼はこれまでの失敗をまるで気にすることなく、同じ楽観主義を持ち続けていた。
一方、ナカムラは別の職場で、さらに完璧な準備を重ね続けていた。
しかし、彼の心の中には常に失敗の恐怖があった。
そして、二人はそれぞれの道を進み続けた。
タナカは再び笑い、ナカムラは再び考え続けた。
彼らはどちらも異なる道を歩んでいたが、最終的にたどり着いた場所は同じ墓場だった。
そこに刻まれた言葉は一つ。
「努力は報われる…かどうかは運次第」