仮想現実の罠【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
「今日こそナカムラに一泡吹かせてやる!」
ヤマダは、強い決意を胸にオフィスへ向かった。
ナカムラは毎日のように陰湿な嫌がらせを繰り返し、ヤマダを追い詰めていた。
しかし、今日は違う。
今日は、ヤマダが逆襲に出る日だ。
会議が始まると、ヤマダはタイミングを逃さなかった。
ナカムラが資料を忘れた瞬間、彼は軽い笑みを浮かべ、冷静に言った。
「ナカムラさん、また資料をお忘れですか?上司としての信用、大丈夫なんですかね?」
会議室は一瞬で静まり返り、ナカムラの顔が硬直した。
ヤマダはその光景に満足し、一息ついた。
しかし、その日の終わりには、彼の机に解雇通知が置かれていた。
ナカムラはすぐに上層部に報告し、ヤマダを追い出す手配をしたのだ。
「やっぱり、こうなるか…」
ヤマダは一瞬、無力感に襲われたが、すぐに冷静さを取り戻した。
そして、ナカムラに最後の一撃を加える計画を練り始めた。
翌日、ナカムラの机に一通の封筒が届いた。
その中には「お疲れ様でした。あなたの忠実な部下より」と書かれたメモとUSBが入っていた。
ナカムラがUSBを差し込むと、そこには彼の不正行為が詳細に記録された映像が映し出された。
そして、その映像はすでに社内の全社員に送信されていた。
ナカムラの顔は蒼白になった。
彼の地位と信用は瞬く間に崩れ去り、社内は混乱に陥った。
ヤマダの計画が見事に成功し、ナカムラはそのしっぺ返しを受ける事となったのだ。
その日、ヤマダはオフィスの外から状況を見守っていた。
夕焼けに染まる空を見上げながら、彼は静かに笑った。
「ナカムラ、これで終わりじゃないぞ。今度はどんな手で来るのか、楽しみにしてるよ」
ヤマダは最後にナカムラへ思いを馳せながら、ゆっくりとオフィスを後にした。
その表情には、次の一手を待ちわびるような余裕が漂っていた。