与える人と奪う人【ショートショート】
与える者の知恵、奪う者の愚かさ
ヤマダとイシカワは、同じ会社の同僚だが、性格は正反対だった。
ヤマダは困っている人を放っておけない性格で、誰にでも優しかった。
イシカワは自己中心的で、他人のアイデアや成果を巧妙に奪うことを生き甲斐にしていた。
ある日、ヤマダは「エコで快適なオフィス空調システム」を提案した。
このシステムは、エネルギーを節約しながら快適な室温を保つという画期的なアイデアで、会社の経費削減に大きく貢献する可能性があった。
ヤマダはこのプロジェクトに情熱を注ぎ、夜遅くまで働いて資料を完成させた。
しかし、イシカワはその成功を横取りすることを狙っていた。
ヤマダが完成させた資料をこっそりとコピーし、自分の名前をリーダーとして書き換えたのだ。
イシカワは、自分がこのプロジェクトの立役者であるかのように振る舞い始めた。
プレゼン当日、イシカワは自信満々でステージに立った。
だが、彼の説明は途中から妙に矛盾し始め、観客は不思議そうな顔をしていた。
「このシステムは、エネルギーを節約しながら…うん?なぜここに温水プールの写真が?」と、イシカワのプレゼンは混乱を招いた。
観客の中には、クスクスと笑い声を漏らす者もいた。
その時、ヤマダが静かに立ち上がり、イシカワの資料に仕掛けていたトリックを明かした。
「みなさん、イシカワさんのプレゼンにはちょっとした秘密があるんです」とヤマダはにやりと笑った。
実は、ヤマダは最初からイシカワの行動を予測し、資料に細かい罠を仕込んでいたのだ。
イシカワは顔を真っ赤にし、しどろもどろになった。
「これがあなたのやり方か」と、声が震えた。
ヤマダは優しく微笑みながら言った。
「与えることも、奪うことも、結局は自分に返ってくるんだ」
観客はヤマダの賢さに驚き、拍手喝采を送った。
イシカワはその瞬間、奪うことの虚しさと、自分の愚かさを痛感したのだった。