エリートコースの選択【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
船の甲板に立つ船長グレイは、誇らしげに腕を振り上げ、船員たちに向けて新たなマーケティング戦略を発表した。
「聞け!我々の海賊事業も競争が激しくなってきた。今こそ新しい戦略が必要だ!」
彼は海図を広げ「襲撃後の評価システム」と大書きした。
「まず、襲撃後には捕虜にアンケートを実施する。これで我々の襲撃方法を改善できるのだ」
船員の一人、ジャックが手を挙げた。
「でも船長、捕虜が話す前に逃げたり死んだりしたらどうしますか?」
グレイはにやりと笑って答えた。
「それは我々の福利厚生制度の一環だ。捕虜を満足させるために、船医を常駐させることにした。彼らの健康管理も我々の責任だ」
別の船員、ビルが少し心配そうに尋ねた。
「捕虜に治療を施す費用はどうするんですか?」
グレイは得意げに言った。
「その費用は全て襲撃の戦利品から出す。利益を再投資することで、事業の持続可能性を確保するんだ」
船員たちは顔を見合わせ、しばらく無言だったが、やがて拍手を送り始めた。
しかし、グレイの笑顔の裏には暗い思惑が隠れていた。
実は捕虜たちが提供する情報が新たな襲撃のターゲット選定に役立つのだ。
彼らは知らずに、より効率的な略奪の手助けをしているのだった。
「さて、次のターゲットはどこかな?」と、グレイは楽しげに呟きながら、新たな航海に向けて船を操った。
船員たちはその言葉に少し寒気を感じたが、船長の命令には逆らえず、次なる冒険に向けて準備を進めたのだった。