小噺ショート
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最も不幸せな国【ショートショート】

佐藤直哉(Naoya sato-)
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嫉妬が生む不幸の連鎖

その国の人々は、まるで毎日が雨の日のように、不機嫌そうな顔をしていた。

笑顔なんて見たことがない。

彼らの間では、他人の成功や幸せを妬むのが当たり前になっていた。

誰かが新しい家を買えば「どうせローンで首が回らなくなるんだろう」と冷たく笑い、新しい仕事に就いた人には「長続きするはずがない」と影で囁く。

ある日、一人の若者が街の中心で演説を始めた。

「僕たちの不幸の原因は他人への嫉妬なんだ!互いに励まし合い、喜びを分かち合おうよ!」

群衆は一瞬静まり返ったが、すぐに嘲笑が広がった。

「理想論で何が変わるってんだ?」

それでも若者は諦めなかった。

「僕たちの不幸は自分たちで招いているんだ。心を変えれば、この国は幸せに満ちるんだ!」

その言葉に、一瞬、群衆の中に動揺が走った。

しかし、次の瞬間、誰かが叫んだ。

「あいつは俺たちを馬鹿にしてるんだ!」

その瞬間、群衆は怒り狂い、若者に向かって石を投げ始めた。

若者が倒れると、人々は彼の遺体を囲みながら言った。

「あいつは一番不幸せだったな。いや、本当に幸せだったのかもな」

最後に、一人の年配の男が静かに涙を流していた。

しかし、その涙の意味を理解する者はいなかった。

ABOUT ME
佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
小説を書いていたはずが、いつの間にか「調べたこと」や「感じた違和感」を残しておきたくなりました。
このサイトでは、歴史の中に埋もれた謎や、日常でふと引っかかる“気になる話”をもとに、雑学記事、4コマ漫画、風刺ショートショートとして発信しています。
テーマはちょっと真面目。
でも、語り口はすこし皮肉で、たまにユーモア。
「なんかどうでもよさそうなのに、気になる」
──そんな話を集めて、掘って、遊んでいます。
読んだ人の中に“ひとつくらい、誰かに話したくなる話”が残れば嬉しく思います。
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