小噺ショート
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リーダーの条件【ショートショート】

佐藤直哉(Naoya sato-)
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偉大なリーダーの条件とは?

大企業の社長として名を馳せるタナカ。

社員からも取引先からも一目置かれる存在だ。

彼の成功の秘密を知りたがる者は後を絶たない。

ある日、新入社員のヤマモトがタナカ社長に質問した。

「社長、成功の秘訣は何ですか?」

タナカはニヤリと笑い、「ヤマモト君、実はこれだ」と引き出しから一冊の古びた本を取り出した。

表紙には『偉大なリーダーの条件』と書かれている。

ヤマモトは興奮しつつも怪訝な顔をしながらその本を受け取った。

夜、自宅でその本を開くと、リーダーシップの基本がズラリと並んでいた。

しかし、最後のページには驚くべき一文があった。

「最も重要な条件、それは…徹底的に自分を疑う能力だ」

ヤマモトは目を見開いた。

「これが社長の秘密か!」

彼は一瞬で冷や汗をかき、これが冗談ではないかと疑った。

翌日、ヤマモトはその本を返しに行き、タナカに尋ねた。

「社長、あの本の最後のページ、本当ですか?」

タナカはニヤリと笑い、「そうだ、ヤマモト君。常に自分が間違っているかもしれないと疑うことで、慎重に考え、他人の意見を取り入れ、最善の判断を下すことができるのだ」

ヤマモトはその瞬間、尊敬の念と共に深い驚きを感じた。

「でも、なぜ私にこの秘密を教えてくれたんですか?」

タナカは冷ややかに微笑んだ。

「簡単なことだ、ヤマモト君。君がこの秘密を知ったところで、私を超えることはないだろうからさ」

ヤマモトは一瞬考え込み、決意を込めて言い返した。

「そんなことありません、社長。私はもっと高みを目指します!」

タナカは満足げに微笑んだ。

彼の目論見は成功したのだ。

実はタナカは新入社員一人一人に合った方法で「成功の秘訣」を教え、彼らのやる気を引き出していたのだ。

ヤマモトには「徹底的に自分を疑う能力」が足りないと見抜き、彼の負けず嫌いな性格を加味してあの秘密を伝えることで彼の成長を促したのだ。

ヤマモトの背中を見送りながら、タナカは次の新人にはどんな成功の秘訣の話をしてやる気を出させようかと考えを巡らせていた。

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佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
小説を書いていたはずが、いつの間にか「調べたこと」や「感じた違和感」を残しておきたくなりました。
このサイトでは、歴史の中に埋もれた謎や、日常でふと引っかかる“気になる話”をもとに、雑学記事、4コマ漫画、風刺ショートショートとして発信しています。
テーマはちょっと真面目。
でも、語り口はすこし皮肉で、たまにユーモア。
「なんかどうでもよさそうなのに、気になる」
──そんな話を集めて、掘って、遊んでいます。
読んだ人の中に“ひとつくらい、誰かに話したくなる話”が残れば嬉しく思います。
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