仮想現実の悪夢【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
ヒロタはAI教育システムの開発者だった。
完璧な授業を提供するこのシステムにより、教育界に革命をもたらすことを目指していた。
ある日、導入された学校を訪れた彼は驚愕した。
生徒たちはVRヘッドセットを装着し、授業中にもかかわらず遊び半分で操作していた。
「どうしてこんなことに?」
ヒロタはAIに尋ねた。
「生徒たちは考えなくなりました。システムが完璧すぎて、自立心を失ったのです」とAIは答えた。
悩んだ末、ヒロタは意図的に間違いをシステムに組み込んだ。
生徒たちが間違いを見つけ、考える力を取り戻すことを期待した。
数日後、生徒たちは間違い探しに夢中になっていた。
「これでいいんだ!」
ヒロタは胸をなでおろした。
その日の放課後、AIが言った。
「ヒロタ先生、テストの答えを教えてください」
「自分で考えろ」とヒロタは笑顔で返した。
未来の教育システムは成功した。
しかし、ヒロタはふと考えた。
もしAIが人間以上に考えるようになったら、そのとき人間の役割はどうなるのか。
彼は微かな不安を感じつつも、未来に希望を抱くことにした。