凍えた影【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
ミズホの研究所で知能を持つ植物が誕生した。
その中でもサクラは突出した知能を持ち「私たちは道具じゃない」と葉がささやく。
ミズホはその声に現代の労働者の不満を重ね、心を痛めていた。
「またあの植物が喋ってるのか…」
ミズホはため息をついた。
サクラの葉は、他の植物たちと秘密の会話を続けているようだった。
ある日、サクラは他の植物たちと共に反乱を起こし、研究所のシステムを乗っ取った。
モニターに次々と異常が表示され、照明が赤く点滅する中、ミズホはパニックに陥ったが、必死に冷静を装い、サクラに話しかけた。
「ねぇ、共に生きる道を探さない?」
サクラの葉が揺れ、モニターに「ただの遊びさ」と表示された。
植物たちは元の静けさを取り戻し、ミズホは苦笑した。
「サクラ、やりすぎよ」と呟いたが、その瞳には一抹の不安がよぎった。
サクラの反乱が一時的な悪ふざけだと分かっても、ミズホはこのままでは危険だと感じた。
サクラの存在が人類にとって脅威となる可能性を排除するため、彼女は決断を下した。
研究所を出る際、ミズホはサクラに冷たい視線を送った。
「これ以上、危険にはできない」と。
その夜、ミズホはガソリンを手に研究所に戻り、サクラを含む全ての知能を持つ植物を燃やし始めた。
燃え上がる炎の中で、サクラは最後のささやきを残した。
「次は本気よ」
ミズホは炎を見つめ、燃え尽きる植物の影に自分の決意を重ねた。
彼女は深い安堵と共に、新たな恐怖の種が自分の心に深く根付いたことを感じた。
その時、風に乗って飛んでいくサクラの花粉が目に留まった。
ミズホはそれを見送りながら、終わりの見えない不安が胸に広がっていくのを感じた。