未来予測装置【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
橋本は完璧な犯罪計画を立てた。
ターゲットはとある企業の機密データ。
雨の日だと機材が故障する恐れがあるため、晴れの日を選んだ。
天気予報もしっかりチェックし、完璧な日取りだった。
しかし、実行の日、橋本が企業に侵入しデータをダウンロードし始めた途端、突然の大雨が降り出した。
機材が故障し、屋外に隠していた証拠品や道具がすべて泥まみれになってしまった。
慌てた橋本は、ダウンロードを完了する前に現場を後にしたが、すぐに警察に捕まった。
取り調べ室で警察官が冷静に尋ねた。
「こんなこともあるんだな」
橋本は苦笑しながら答えた。
「運が悪かっただけさ」
数日後、警察官が再び橋本を訪ねてきた。
「実は、君が盗もうとしたデータは、すでに他の不正アクセス者によって盗まれていたんだ」
橋本は驚いて目を見開いた。
「本当か?」
警察官は頷いた。
「そうだ。君の計画がなければ、我々はその事実に気づかなかっただろう。ところで、あの日の大雨について不思議に思わなかったか?」
橋本は眉をひそめた。
「確かに、急に降り出したけど…まさか」
警察官は微笑みながら答えた。
「企業が秘密裏に開発した天候制御システムを使ったんだ。君の動きを察知して、意図的に大雨を降らせたんだよ」
橋本は呆然としながら、「完璧な計画も、完璧な失敗も、すべて誰かの手の中だったんだな」と呟いた。
薄暗い取り調べ室に橋本の笑い声が響き渡る。
計画の裏にある真実を知り、彼はただ笑うしかなかった。
「次回は、雨にも相談しておくべきだな」と、肩をすくめて付け加えた。