小噺ショート
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何かに追われていた午後【ショートショート】

佐藤直哉(Naoya sato-)
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ずっと何かに追われていない?

都会のカフェ、午後の静けさが漂う。

窓際の席で彼女はスマートフォンを片手に、頻繁に画面をスクロールしていた。

通知音が絶え間なく鳴り、彼女の表情には焦りが見える。

隣のテーブルから声が聞こえる。

「ずっとスマホを見てるね。何か急ぎの仕事でもあるの?」

若い男の問いに、彼女は顔を上げて苦笑する。

画面には未読のメッセージが山積みだ。

「急ぎじゃないけど、常に追われてる感じがして」

彼女の目は疲れたように曇っている。

「何に追われているの?」

「時間と、他人の期待に。いつも何かに追いつこうとしてるの」

男は少し黙り、やがて穏やかに微笑んだ。

「ここで少し休んでみない?コーヒーでも飲みながら」

彼女は驚いたように彼を見つめ、やがて微笑みを返す。

スマートフォンの画面を消し、バッグにしまった。

「そうね、少し休もうか」

二人は席を立ち、カウンターへ向かう。

カフェの柔らかな光が、彼らを包んだ。

ABOUT ME
佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
小説を書いていたはずが、いつの間にか「調べたこと」や「感じた違和感」を残しておきたくなりました。
このサイトでは、歴史の中に埋もれた謎や、日常でふと引っかかる“気になる話”をもとに、雑学記事、4コマ漫画、風刺ショートショートとして発信しています。
テーマはちょっと真面目。
でも、語り口はすこし皮肉で、たまにユーモア。
「なんかどうでもよさそうなのに、気になる」
──そんな話を集めて、掘って、遊んでいます。
読んだ人の中に“ひとつくらい、誰かに話したくなる話”が残れば嬉しく思います。
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