完全自動渋滞のススメ【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
山田誠はふと立ち寄った古びた骨董店で、一つの指輪を見つけた。
棚の奥に光るそれを手に取ると、店主のじいさんが「この指輪は願いを叶えるが、代償がある」と警告してきた。
しかし、誠は「まあ、なんとかなるさ」と軽く考えた。
「お金が欲しい!」と願うと、財布がパンパンに膨れ上がった。
しかし、愛用のペンが消えた。
「ペンくらいならいいか」と誠は笑った。
次に「昇進したい!」と願い、豪邸を手に入れた。
しかし、そのたびに友人や家族が一人ずつ消えていく。
「これってヤバいかも」と感じ始めたが、欲望は止まらない。
最後の願いを叶えた瞬間、誠の体が薄れていった。
「もう何も残ってない…」と呟くと、周りは静寂に包まれた。
目を覚ました誠は、再び骨董店にいた。
指輪を見つめ「やっぱり買うのはやめよう」と店を出た。
しかし、ポケットに指輪が入っていることに気づき、凍りついた。
その時、店主が再び現れ「おや、それを手に入れるとは、君は特別な客だね」と微笑んだ。
誠は絶望の中で乾いた笑いを漏らした。
「もう、何も願わないさ…」
店主はにやりと笑い「それが一番賢い願いかもしれないね」と囁いた。