煙と消えた秘密【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
田中翔太は、仕事のストレスで疲れ果て、何か変わったことが起きればと科学展に足を運んだ。
そこで出会ったのが、西村玲子という名の怪しげな科学者。
彼女から「永遠に若くいられる薬」を手に入れた翔太は、半信半疑ながらも家に帰ると小瓶を手に取り、一気に飲み干した。
「うわっ、熱い!」
瞬間、体が熱を帯び、鏡に映る自分はまるで二十歳の頃のように若返っていた。
しかし、しばらくすると、心はどんどん老け込んでいく。
「昔はこんなことで笑えたのに…」
同僚の冗談に応じようとしても、苛立ちが募るばかり。
若い体と老いた心のギャップに苦しむ日々が続いた。
そんなある日、翔太はついに玲子を訪ね、薬の効果を逆転させる方法を尋ねた。
「それなら、もう一つの薬が必要です」
玲子の言葉に一縷の望みを抱き、翔太は新たな薬を手に取った。
「これで元に戻れる…」
激痛に耐えながら薬を飲み干すと、やがて年相応の体と心に戻った自分が鏡に映った。
「これで、本当の自分に戻れた…」
安堵の笑みが浮かぶ。
その時、玲子がにやりと笑って言った。
「おめでとうございます、田中さん。でもね、次に若返りたい時は、またこの薬を飲まないといけませんよ。何度でも」
翔太は呆然としながら「まるで地獄だ…」と呟く。
玲子は楽しげに答えた。
「そう、永遠に若さを求めるループ地獄へようこそ」