統計が暴く善意の罠【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
村の夜は静寂に包まれていた。
しかし、その静けさを破るように、時計塔の鐘が夜中に突如として鳴り響いた。
村人たちは目を覚まし、村の宝物が消えていることに気づいた。
「一体誰がこんなことを?」
村人たちは口々に疑問を投げかけた。
そこに通りすがりの自称名探偵、ハロルドが現れた。
「皆さん、お困りのようですね。私にお任せください。宝物の行方を必ず突き止めます」と自信満々に宣言した。
ハロルドは村人全員のアリバイを調べ始めたが、誰も塔に入った形跡がない。
「これは妙だな」とハロルドは首をかしげた。
その時、村の猫がのんびりと歩いてきた。
ハロルドは猫の首輪に目を留め、小さな鍵がついていることに気づいた。
「これは面白い」とハロルドは微笑んだ。
その鍵を手に取ると、猫が突然走り出し、時計塔の裏に向かって行った。
ハロルドは猫を追いかけ、鍵穴が見つかった。
鍵はぴったりと秘密の入口を開けた。
塔の内部に入ると、そこには宝物があった。
「見つけたぞ!」と叫ぶハロルドに、村人たちは感謝の意を示した。
「しかし、もう一度しっかり調べてみる必要がありますね」と言って、ハロルドは宝物を袋に入れた。
そして村人たちを外に待たせ、「犯人を突き止めるためにもう少し時間をください」と告げた。
塔の中で一人になったハロルドは、袋をしっかりと握りしめ、にやりと笑った。
「これで計画通りだな」
その夜、ハロルドは村から姿を消し、宝物も共に消えた。
村人たちは翌朝になってもハロルドが戻らないことに気づき、ようやく彼が犯人であったことを悟った。
「あの探偵が全部仕組んだのか!」
村人たちは悔しそうに口々に言った。
ハロルドは遠くの町で、星空を見上げながら呟いた。
「村の救世主になって拍手喝采を浴びるのも、泥棒になって宝を手にするのも、要は演技力次第ってことだな」