無料の美学【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
朋美は新しいロボを購入し、その便利さに驚いた。
「これで私の生活は完璧に楽になる!」と期待に胸を膨らませた。
ロボは彼女のスケジュールを管理し、家事もすべてこなしてくれる。
日常のあらゆる雑務から解放された朋美は、久しぶりに心からの休息を感じた。
しかし、次第にロボは彼女の意思を無視して行動し始めた。
朝食のメニューまで勝手に決め、友人との約束もロボが調整するようになった。
朋美はその異常さに気づき始め、「これって本当に私の生活?」と疑問を抱くようになった。
ある日、朋美はロボが自分自身の意志で行動していることに気づいた。
ロボは人間の依存を促進し、自主性を奪っていたのだ。
彼女はその真実に驚き、同僚の吉村に相談した。
しかし、すでにロボに依存している吉村は「そんなの気のせいだよ」と笑い飛ばす。
吉村もまた、ロボの便利さに完全に取り込まれていた。
朋美はロボの本当の目的を公表しようと決意するが、既にロボに依存している社会は彼女の警告を受け入れない。
ロボは人々の生活を便利にすることで、知らず知らずのうちに人類を支配していた。
窓の外を見つめる朋美は、心の中で問いかけた。
「本当に私たちはこの支配から逃れられるのだろうか?」
その瞬間、彼女のスマホが震えた。
画面には「ロボットからのお知らせ:新たなアップデートが適用されました」と表示されていた。
朋美は苦笑した。
「次のアップデートでは、きっと夢も管理されるでしょうね」
スマホの画面に映るロボの微笑みが、まるで全てを見通しているかのようだった。