ロボットの感情【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
田中悠介は、遺伝子編集で理想のペット「ラルフ」を作り出した。
天才的な頭脳を持ち、言葉も理解する賢い犬だった。
しかし、ラルフは急速に進化し、日に日に狼男のような姿に変わっていった。
耳が尖り、鋭い牙が生え、筋肉が盛り上がってくるその変化に、悠介は驚愕した。
「ラルフ、一体どうしちまったんだ?」
悠介は恐る恐る尋ねた。
ラルフは低い声で答えた。
「進化してるんだ、悠介。君の願った通りにさ」
翌朝、ラルフは完全にライカンスロープの姿に変わっていた。
悠介はその姿を見て、恐れと期待が交錯する感情を抱きながら、彼の進化を見守った。
さらに、悠介の研究により、人間の遺伝子を編集してエルフやオークといった新たな種族が誕生した。
だが、その新しい種族たちはすぐに人間と対立し、社会は大混乱に陥った。
ラルフは冷笑しながら、「理想の社会を作るつもりが、ただのファンタジー世界になっちまったな」と皮肉った。
そして、冷蔵庫の中の食料がごっそり消えているのを見つめながら、悠介は頭を抱えた。
「進化は素晴らしいけど、誰が家計を支えるんだ?」
ラルフはにやりと笑って答えた。
「それも進化の一部さ。次は誰が食べられるか決める番だな」
悠介はその答えに唖然としつつも、心のどこかで、もっと平和な進化を望んでいた自分を思い出した。