運命の恋人【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
未来社会で、不老不死の薬「エターナルライフ」が発売され、人々は歓喜に包まれた。
永遠の命を手に入れたかに見えたが、その裏には恐るべき副作用が潜んでいた。
細胞を修復する際に激痛を伴い、その痛みが永遠に続くというものだった。
街中には「この痛みがずっと続くなんて!」という悲鳴が響き渡る。
研究者の一郎は、自身の責任を痛感し、解毒薬の開発に取り組むことを決意した。
しかし、会社の方針は利益優先であり、CEOは冷淡に言い放った。
「不老不死にした上で、解毒薬で戻すと言えば、売り上げがもっとあがるだろう?」
驚愕した一郎は反論した。
「それでは人々を二重に苦しめるだけだ!」
「あなたはこの薬を使ったことがないから、そんなことが言えるんだ!」
だが、CEOは耳を貸さない。
怒りと使命感に燃えた一郎は、解毒薬の配布を決意した。
「永遠の命の裏には終わらない痛みがあるんだ!」
「私もこの薬を使用したから、その痛みは分かる!」と叫びながら、一郎は解毒薬を配布し始めた。
人々は解毒薬を求めて殺到し、会社の計画は頓挫する。
しかし、その瞬間、CEOは冷笑を浮かべ、新たな広告を掲げた。
「完全無痛の『パーフェクトライフ』今度こそ真の永遠を手に入れよう!」
一郎は呆れつつも、CEOの底知れぬ商魂に苦笑するのだった。
そして、その騒動の一部始終を見ていたCEOの秘書・美咲は遠慮がちにCEOに質問する。
「あの、どうして皆さん、命がどうこうなんて大げさに語るんでしょう?」
「この薬って養毛剤ですよね?激痛というのも単なる痒みの事ですし」
CEOは自らの頭頂部をなでながら答えた。
「美咲君、髪が命なのは女性だけではないんだよ」