何かに追われていた午後【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
秋山翔は、宇宙コロニーでの日常業務に追われていた。
地球での仕事と大差ないが、彼は新しい環境に少しずつ慣れていた。
そんなある日、地球との通信が突然途絶えた。
「なんだこれ?通信障害?」
翔は原因を探るが、システムの複雑さに頭を抱える。
「一筋縄ではいかないな…」
一週間後、コロニー内の緊張は高まっていた。
住民たちは不安を募らせ、翔もそのプレッシャーを感じていた。
「これが最後のチャンスだ」と自分に言い聞かせ、アンテナの修理に向かう。
星々が輝く中、翔の額には冷たい汗が流れる。
彼は静かな決意を胸に、慎重に作業を進めた。
やがて、地球との通信が再び繋がる。
「成功した!」
翔は安堵の笑みを浮かべた。
しかし、その瞬間、通信端末から驚くべきメッセージが届いた。
「シミュレーション試験終了。おめでとうございます、秋山翔さん。あなたは宇宙コロニー生活への適性が確認されました」
「なんだって?」
翔は困惑し、周りを見渡すと住民たちの姿が徐々に消え始めた。
建物が揺らぎ、全てが消えていく中、彼は思い出した。
これが宇宙コロニー生活の適性を見るための試験だったことを。
景色が完全に消え去り、真っ白な部屋に戻された翔は、現実に引き戻されたことを実感した。
「シミュレーションでこれなら、現実はどれだけ大変なんだ…」
しかし、彼の心には期待も混じっていた。
「いやいや、これからが本番だ。現実の宇宙コロニー生活でも、俺はやれるはずだ」
通信修理の成功が一転、翔はシミュレーションから目覚め、新たな現実に立ち向かう準備を整えたのだった。