選択の果て【ショートショート】

選ぶたびに、運命は歪む――
このボタン、押しますか?
「もし、自分の人生をボタン一つで変えられるとしたら——君は押すか?」

目が覚める。
天井、壁、床、全部が見知らぬ空間。
何かの実験施設か、それとも悪質なドッキリか?
「……なにここ?」

目の前には、ずらりと並ぶボタン。
◆『金持ちになる』 ◆ 『モテる』 ◆ 『健康になる』
「なにこれ? 俺に選べってこと?」
怪しすぎる。
でも、これはチャンスかもしれない。

「よし! まずは金持ちだ!」
ボタンを押すと——

銀行口座の数字が跳ね上がる。
「億万長者爆誕!!」
と、喜ぶ間もなく——

税務署、金融監視機関、そして謎の組織が動き出した。
「ちょっ、待て! 俺は普通に生きたいだけ!」

口座は凍結、資産は押収。
あっという間に借金生活だ。
「こんなはずじゃ……」

パニックのまま、次に「モテる」を選択。

すると、美女たちが群がってくる!
「うひょー! これは楽園……?」

しかし、すぐに事態は悪化。
SNSで個人情報が拡散。
家の前にはストーカーの行列。
「怖すぎるんだが!?」

仕事場にも押しかけられ、何者かに監視される日々。
警察を頼るも「モテる代償」と言われ、相手にされない。
「これ、罠じゃん……」

震えながら、「健康になる」を押す。
結果——

不死身になった。
「お、悪くない?」
……と思ったのも束の間。

病院からの莫大な請求。
「保険適用外? 医療費全額負担? どういうこと!?」
しかも、「治療の必要がないため契約解除」との通知。

加えて、体が異常に回復しすぎるせいで、普通の生活が送れない。
「眠れない……腹も減らない……何も感じない……」
最悪のルート。
「もう戻すしかねぇ!」

「全てを元に戻す」を押す。

——目が覚める。
「ふう、やっぱり夢だった……?」
枕元のスマホが震える。

【おめでとう! 期間限定で再選択可能!】
「……は?」
新たな選択肢が追加されていた。

◆ 『運命を受け入れる』 ◆『真実を知る』 ◆ 『再起動する』
「いや、もう選びたくないんだけど……」
しかし、逃げることはできない。
スマホの画面には新たな通知が。

【タイムリミットまで残り3分】
「おいおいおい!」
このまま選ばなければ何が起こる?
消えるのか?
それとも——

「……くそっ!」
「真実を知る」を押す。

世界が歪む。

目の前に、巨大なスクリーンが現れる。
そこには、俺の人生の選択が詳細に記録されていた。
「これは……?」
まるでゲームのプレイデータ。
過去の行動、選んだ選択、未来の可能性まで。
「これが、俺の運命……?」
さらに、一番下には奇妙な文字が——
【管理者コード入力待機中】
「管理者……?」
まさか、俺は誰かに操られているのか?
スクリーンの下部に新たな表示が現れる。
【管理者特権を取得しました。あなたの役割は——】
「……役割?」

次の瞬間、部屋が激しく揺れる。
壁のボタンが次々と消え、床がゆっくりと崩れ始める。

「待て、待て待て! 俺は何者なんだ!?」
選択を繰り返していたのは、本当に俺だったのか?
「俺は……」

全てが光に包まれた。

次に目を開けた時、俺は最初に見た部屋ではなく、
全く別の場所にいた——。