英雄行為の価値はいくら?【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
午前九時
デスクに座る。
パソコンを開く。
受信トレイは嵐のようだ。
それぞれの件名が大声で叫んでいる。
けれど本文は、どれも同じだった。
「詳細は後日お伝えします」
── それなら、確認するのも後日でいい。
僕は、そっとパソコンを閉じた。
午前十一時
会議室に入ると、ホワイトボードがすでに騒がしい。
いくつもの矢印、付箋、消しきれなかったマーカーの跡。
人の言葉が飛び交うが、どこにも行き着かない。
「では、次回の会議で最終決定をしましょう」
上司が言う。
次回。
また次回。
そういえば、最初の会議で話していたことはなんだっただろう。
もう誰も覚えていないのかもしれない。
── 僕たちは、会議のために会議をしていたのか?
午後十二時
「スマホでニュースをチェックしよう」
そう思った瞬間だった。
動画配信サイトの関連動画が、するりと視界に入る。
気づけば、昼休みが終わっていた。
── かわいいものには、時間の概念がない。
午後三時
進捗報告会が始まる。
上司が言った。
「君は今日、何をしていた?」
僕は答える。
「時間の使い方を記録していました」
「そんな無駄なことしてる暇があったら、仕事しろ!」
なるほど。
── 時間を効率的に使う最大の敵は、『時間の使い方を気にしすぎること』だった。
監査結果
✅ メール:見ただけ
✅ 会議:終わりの見えない旅
✅ 昼休み:カワウソの無限ループ
✅ 監査:最大の無駄
部長、
「時間を有効に使え」とは、
どういうことなのでしょうね。