無欲の片隅【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
田中直樹は、テレポーテーション研究所の取材に向かった。
技術の天才、白石美咲に迎えられ、彼は興奮を隠せなかった。
初めての転送体験に、直樹は「これが未来か!」と叫んだが、美咲の目には暗い影があった。
「田中さん、この技術には恐ろしい秘密があるんです」
直樹は眉をひそめた。
「どういうことですか?」
美咲は苦笑し、「転送されるのは記憶と意識のコピーだけ。元の体は消えてしまい、新しい体が再構築されるんです。しかし、元の体はその場で消滅するのです」と告げた。
直樹はショックを受けたが、真実を追い求めるジャーナリスト魂が燃え上がった。
「これを公表しましょう」
二人は証拠を集めるために動き出したが、巨大企業の圧力が二人に迫る。
直樹は不意に拉致され、暗い地下室に閉じ込められた。
しかし、美咲の巧妙な計画で脱出に成功し、ついに真実を公表する。
世間は騒然となり、技術の恐怖が明るみに出た。
「本物の瞬間移動を目指しましょう」と誓う直樹と美咲。
新たな挑戦が、彼らを待っている。
そして、直樹はふと感じた。
「もしかして、今の自分もコピーなのではないか」と。
視界の端に、かすかに揺らめく自分の手のひらが、一瞬だけ透明に見えた。