仕事狂【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
「こちらが新発明『アンガー・ブースター』です!」
白衣を着た科学者が壇上で胸を張る。
装置は腕時計型で、小さなスイッチがついているだけだ。
科学者が説明する間、筋骨隆々のボディビルダーが装置を装着した。
「では実演します!」
スイッチが押される。
彼の顔が真っ赤になり、腕の筋肉が膨れ上がる。
そして――。
ゴォン!
鉄パイプがみしみしと曲がる音が響く。
観客から驚きの歓声が上がった。
「次の挑戦者を募集します!」
手を挙げたのは、控えめな主婦だった。
黒髪をきっちりとまとめた彼女は、おずおずと壇上に上がる。
「私でいいんでしょうか?」
「もちろんです!ぜひどうぞ!」
装置を腕に巻き、スイッチを押す――
彼女の表情が一変する。
「なんで私だけが毎朝ゴミ出しをしてるのよっ!」
彼女の怒りは爆発。
近くのスピーカーに向かって拳を振り下ろした。
ガシャーン!
スピーカーは一撃で粉々に。
観客は固まる。
科学者は青ざめながら、装置を止めるスイッチを押した。
「これ、家庭内では慎重に使ってくださいね…」
その夜、ニュース番組には装置を背負った主婦が満面の笑みで映っていた。
ナレーションが語る。
「未来の家庭円満装置、ただいま実験段階です!」
テレビの前で夫たちは震え上がったとか――。