次元の裂け目【ショートショート】
次元の裂け目が開くとき、彼の欲望は無限の闇に飲み込まれる
都市の夜空に突如、次元の裂け目が現れた。
その異様な光景に、物理学者の遠野翔(トオノショウ)は興奮を隠せなかった。
未知の世界への探求心と、その知識を独り占めして名を上げる欲望が彼を突き動かしていた。
さっそく調査を始めた彼の前に、銀髪の美少女、リシアが現れた。
彼女は緊張した面持ちで言った。
「あなた、次元の裂け目の研究者ですよね?助けが必要なんです」
翔は怪訝そうに答えた。
「どうして僕に?」
リシアは切実な声で説明した。
「私の世界が崩壊寸前なんです。裂け目を通じてこちらに来ましたが、安定させるためには助けが必要なんです」
翔は考えた。
この少女が持つ知識は貴重だ。
彼女にとって助けは研究者なら誰でも良いのだろうが、せっかくのチャンスを無駄にする理由はない。
彼はリシアの知識を得るために協力するふりをした。
「わかった。協力するよ」と笑顔で答えたが、心の中では別の計画を練っていた。
リシアを連れて次元の裂け目の元へ向かうと、翔は手際よく装置を準備し、儀式を開始した。
リシアは感謝の言葉を述べ、涙を浮かべた。
「ありがとうございます、これで私の世界は救われます」
裂け目が安定し、異世界への道が開かれた瞬間、翔は冷徹な目でリシアを見下ろし、冷ややかに囁いた。
「君の知識は役立った。でも君自身はもう不要だ」
その言葉と同時に、翔は装置を操作し、リシアを裂け目の向こう側に閉じ込めた。
リシアは驚愕し、叫び声を上げたが、裂け目は次第に閉じ始めた。
「これで全てが僕のものだ」と翔はほくそ笑んだ。
しかし、裂け目が閉じる直前、リシアが最後に呟いた。
「あなたも…一緒に…」
次の瞬間、翔の周りの景色が変わり、彼は異世界に閉じ込められた。
翔は愕然とした。
「これで異世界の研究を独占できるが、元の世界へ帰る方法を失ってしまった…」
翔の探求心と独占欲は、彼自身を新たな世界に閉じ込める結果となったのだった。