黄金の夢、数円の現実【ショートショート】
金を掘り出せると思ったら、掘り出したのはため息だけだった
「電子ゴミ処理で金がゲットできる!」
という話を聞いて、マサトはすっかり夢見心地だった。
まるでお宝発掘みたいなワクワク感が胸を膨らませていたのだが…。
「こちらでは古いスマートフォンやパソコンを解体して、金や銀を回収しています。環境に優しく、リサイクルに役立ってるんですよ~」
ガイドのお姉さんがにっこり。
「えっ、それって本当に金になるんですか!?どれくらい?」
マサトは思わず身を乗り出した。
「ええ、ただ…スマホ一台から取れるのは、ほんの数円分ですね!」
ガイドは明るく答えるが、その一言がマサトの心をグサリと突き刺した。
「数円!?…それ、まるで小学生のお小遣いじゃないか」
心の中で誰に言うでもなく叫ぶ。
夢見た宝の山が、一瞬でただのガラクタに変わった気分だった。
ツアーが進むにつれて、巨大な機械が次々と電子機器を砕いていく様子はなかなか見ごたえがあった。
「…まるで未来のSF映画みたいだな」と、少し落ち着きを取り戻したマサト。
だがふと、また疑問が浮かんだ。
「もし世界中の電子ゴミを全部集めて金を取り出したら、どれくらいの量になるんですか?」
「たぶんトン単位にはなりますよ。でも、回収にかかるコストを考えると、まさに『金を得るために金を使ってる』ようなものですね」と、ガイドが少し皮肉気に答える。
マサトは苦笑いを浮かべた。
「じゃあ、この施設って…?」
ガイドは胸を張って言った。
「ええ、『無駄を減らすための無駄な努力』ですね!でも、私たちにとっては重要なミッションなんです」
ツアーを終えたマサトは、もやもやと考え込んでいた。
「…俺の人生も、そんな感じかもな」
まるで自分の努力が全部、無駄を減らすための無駄に見えてきた。
「まあ、いいさ」と、諦め半分で自分を励ましつつ、マサトは次のビジネスアイデアを思いついた。
「スマホケースでも売るか…あ、いや。『お宝が詰まったケース!中身は金より価値があるかも?』…ん?これじゃ、詐欺っぽいか。でも、結局、こういうのがウケるんだよな」
最後に自嘲気味に笑った。
「そっか、俺がやってるのも…『無駄を減らすための無駄な努力』だよな」