本音モード【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
未来の東京。
弁護士の鈴木健一は、自分のクローンであるケンと初めて対面した。
「まさか君が、僕のクローン?」
鈴木は驚きの声を上げた。
ケンは真剣な眼差しで頷いた。
「そうだよ。でも、僕は君の影じゃない。僕自身の権利が欲しいんだ」
ケンは、自分の権利を求めていたが、社会はクローンをただの道具としか見ていなかった。
鈴木はケンのために立ち上がる決意を固めた。
「君の権利を守るために戦うよ」
その言葉に、ケンの目が希望の光を帯びた。
科学者の鈴木真由美が資料を持って駆けつけた。
「これがクローンの存在を証明するデータよ。これで法案を通せるはず」
法廷での戦いは過酷だったが、ついに新しい法案が可決された。
鈴木はケンと固く握手を交わした。
「これで君も自由だ」
ケンは微笑んだが、その目には深い影があった。
「自由って…でも、僕は何者なんだ?」
鈴木はその問いに答えられず、静かに見つめ返した。
自由を得たクローンは、新たな葛藤に直面する。
未来には、まだ答えの見えない問いが待っていた。