自由という名の檻【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
「リサイクルは未来への投資だ!」
カワムラは輝く缶を掲げ、誇らしげに胸を張った。
缶一つ洗うのに30分…まるで地球の命運を握っているかのように真剣そのものだ。
「おいおい、それ無駄な手間じゃないか?」
ササキは椅子にもたれ、コンビニの空き瓶を手で転がす。
「再利用こそが究極のエコだ。使い捨ては地球を破滅に導くんだぜ」
カワムラが真面目で几帳面なら、ササキはズボラで飄々としている。
彼の「再利用」は、ただの放置に近い。
二人のエコバトルは、いつものことだ。
カワムラは缶を洗い、ササキは瓶を放置し、互いに自分こそが環境を救っていると信じて疑わない。
そんな日、ゴミ収集車がやってきた。
おじさんが二人の「エコの結晶」をゴミ袋にまとめて投げ込みながら、ため息混じりに一言。
「どうせ全部燃やすんだよ。無駄な努力だな。」
「え、燃やす?」
カワムラは固まった。
「俺の…30分が…」
ササキも顔をしかめた。
「俺の…永遠のエコ計画が…終わった?」
二人はその場で立ち尽くし、やる気を失った。
そして次の日から、エコについて語ることもなくなった。
カワムラはリサイクルにこだわることをやめ、ササキは再利用を放棄する…かに見えた。
が、実際はコンビニのゴミ箱の前で缶コーヒーとビールを飲むだけの怠け者コンビに変わっていただけだった。
「そういえばさ、あのおじさん…リサイクルの人じゃなかったよな?」
「…あれ、誰だったんだっけ?」
ササキが眉をひそめる。
「うーん、ただの近所の親父かもな…」
二人はしばし黙り込み、やがてため息をついて、再びゴミ箱に缶を投げ入れた。