監視システム【ショートショート】
見えすぎるとき、進歩は喜びか、それとも恐怖か?
「できたぞー!」
ミヤザキは大声で叫んだ。
最新の「オペレーション監視レーダー」システムがついに完成したのだ。
これで工場内のどんな些細なミスも、即座に検知し通知できる。
チーム全体が歓喜に包まれた…はずだったのだが、タナカだけが不安そうに俯いていた。
「どうした、タナカ?こんな大事な日に曇り顔とは。まさか俺たちが開発したシステムが、お前の秘密まで暴いちまったんじゃないのか?」
ミヤザキは冗談交じりに肩を叩いた。
タナカは深いため息をつき、ぼそりと答えた。
「いや…正直、怖いんです。このシステム、どんな小さなミスも見逃さないって言いますけど、それって自分のミスが全部明るみに出るってことで…もうどこにも隠れられない気がして」
ミヤザキは一瞬真剣な顔になり、それからニヤリと笑った。
「それがこのレーダーのすごいところだ。見たくないものまで全部見える。でも、タナカ、それこそが成長の鍵だぞ。ミスが見えるからこそ、次にどう修正するか考えることができるんだ」
タナカは少し考え込んでから、苦笑しながら言った。
「まるで、僕らの人生そのものですね…逃げ場がないけど、その中で成長していくって」
「その通り!」
ミヤザキはタナカの背中を勢いよく叩いた。
「俺たちのシステムが影を暴いてくれるなら、次はその影をどう利用するか考えればいいんだ。逃げるんじゃなく、向き合っていこうぜ」
タナカは「はい…」と小さく答えたが、その目にはまだ不安が残っていた。
その瞬間、ミヤザキの携帯が鳴り響いた。
画面には『上司』の文字が浮かんでいた。
「…おっと、影の主からお呼びがかかったようだな」
ミヤザキはタナカにウィンクしながら言った。
「さて、俺たちの影を見る時間が来たみたいだ!」
開発室には笑いとともに少しの緊張感が漂った。
技術は光と影を共に映し出す鏡であり、その鏡に映る自分をどう受け止めるか――それが、次の光へと進む鍵なのだ。
ただ、その先には上司の鋭い視線も待っているのだが、それもまた成長の一環である。