天才の正体【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
彼は、世界中の著名な研究者たちに招待状を送った。
新しい研究プロジェクトへの誘いだ。
これが彼にとって、長年の研究がようやく認められる機会になると信じていた。
送信ボタンをクリックしたとき、彼は小さく息を吐き、冷めたコーヒーを手に取った。
その苦味は、彼の期待の中にあるわずかな不安を和らげるようだった。
一週間が過ぎ、彼の元に返答が一通届いた。
それは、期待とは裏腹に冷淡なものであった。
「お招きいただきありがとうございます。しかし、すでに同様の結論に達しており、新たな発見は期待できないため、参加は見送らせていただきます。今後のご成功をお祈りいたします」
彼は文末に記された署名を見た。
「AI-47」と書かれていた。
彼は手紙を静かにデスクに置き、しばらくその場に立ち尽くした。
外の景色はいつもと変わらず、無表情なまま彼を見つめていた。
そして彼は、自分の胸の中で何かが静かに崩れ落ちていくのを感じた。
時代は確かに変わったのだ。
かつて自分が信じていたものが、もはや彼の手の届かない場所にあるのだと理解した。
彼は冷めたコーヒーを一口飲んだ。
舌先に広がる苦味は、彼の心に残るわずかな希望をそっと消し去るようだった。