少年のヒーロー計画【ショートショート】
少年の夢が、町を救う
「俺、絶対にヒーローになるんだ!」
少年は、手作りのマントを背中に結び、鏡の前で決意を新たにした。
彼が憧れるのは、誰からも認められるヒーロー。
しかし、現実の世界は違った。
学校ではクラスメイトにからかわれ、家では両親に気づかれずに過ごす毎日。
少年にとって、ヒーローになることだけが自分を証明する方法だった。
「悪者がいなければ、俺が作るしかないよな…!」
少年はガレージに駆け込んだ。
古びたおもちゃや壊れた家電を使って、彼は「悪者捕獲マシン」を作り上げた。
少年にとって、このマシンは単なるガラクタの寄せ集めではなく、彼の夢を叶えるための第一歩だった。
その夜、ガレージから聞こえた罠の作動音に、少年の心は躍った。
「ついに、俺の出番が来た!」
彼は胸を弾ませてガレージへ駆け込んだが、そこで見たのは…帰宅途中の父親だった。
「お、お父さん…?」
少年は驚き、何が起こったのか理解できなかった。
父親は疲れた顔で「何をしているんだ、こんな時間に」と軽く笑いながら言った。
少年の夢が現実の壁にぶつかり、砕け散ったように感じた。
「俺…ヒーローになりたかったんだ…」
少年は涙をこらえながら、父親に訴えた。
父親は少年の肩に手を置き、優しく言った。
「ヒーローになるには、たくさんの失敗と努力が必要なんだ。大事なのは、自分を信じて前に進むことだ。お前なら、きっとできるさ」
翌日、少年は父親の言葉を胸に刻みながら、ヒーローの夢を一時的にしまい、学校へと向かった。
ガレージには壊れた「悪者捕獲マシン」が残されていたが、その破片が夜ごとに不思議な光を放ち始めていたことには、誰も気づいていなかった。
数日後、町の片隅で「謎のヒーロー」が現れたという噂が広がり始めた。
少年が作った罠の残骸が、知らないうちに町を救う役割を果たしていたのだ。
少年はそのことをまだ知らないが、彼の胸には再び強い決意が芽生えていた。
「俺、絶対に本当のヒーローになるんだ!」