「頼んでない荷物」が届くのはなぜ?──謎の種、偽レビュー、QRコードの罠
はじめに

「頼んでない荷物が届いた」
玄関を開けると、小さな荷物が置かれていました。
「……何これ?」
宛名を見る。
名前も住所も、自分のものです。
でも、頼んだ覚えがない。
通販サイトの購入履歴を見ても、それらしい注文はありません。
「まあ、タダでもらえたならいいか」
そう思って箱を開けると、中から出てきたのは安そうなイヤホン。
もちろん請求書も入っていない。
「なんだ。ほんとにタダじゃん」
ところが、この荷物。
送り主にとって大事なのは、イヤホンではないかもしれません。
狙われているのは、
あなたの住所です。
海外では、注文していない商品を勝手に送りつける「ブラッシング」と呼ばれる手口が確認されています。
やり方は少し変わっています。
業者はまず、どこかで手に入れた名前や住所を使い、通販サイト上で商品が売れたような形を作ります。
そして実際に、安い商品をその住所へ発送する。
荷物が届けば、
「商品は実際に配送された」
という記録が残ります。
すると、その取引を利用して販売実績を増やしたり、購入者を装ったレビューを書いたりできるわけです。
「いや、でも俺はレビューなんか書いてないけど?」
もちろん本人は書いていません。
ですが知らないところで、
★★★★★
「とても良い商品でした!」
と、満足した客になっている可能性があります。

しかも本当に気になるのは、そこだけではありません。
「……そもそも、なんで俺の住所を知ってるんだ?」
荷物は数百円。
でも、その荷物が家まで届いたということは、
名前と住所の組み合わせが、すでに誰かの手に渡っている可能性があります。
タダの商品を一つもらった。
そう考えると少し得をした気分になります。
でも送り主から見ると、
「この名前、この住所。本当に使えるな」
と確認に使用したのかもしれません。
※本記事は筆者個人の感想をもとにエンターテインメント目的で制作されています。
世界中に「謎の種」が届いた

こうした「頼んでいない荷物」は、もっと奇妙な騒動を起こしたことがあります。
2020年。
アメリカを中心に、突然こんな荷物が届き始めました。
「……種?」
袋の中には、植物の種。
注文した覚えはありません。
しかも、海外から送られている。
同じような報告が各地で相次ぎました。
「誰が送ってるんだ?」
「これ、植えて大丈夫なのか?」
問題は、ただ「知らない種が届いた」というだけではありません。
海外から植物が入ってくると、そこに現地にはいない害虫や病原体が紛れ込むことがあります。
さらに、繁殖力の強い植物だった場合、農地や自然環境へ広がる可能性もあります。
そこで出てきたのが、
「誰かがわざと送りつけているんじゃないか?」
という疑いでした。
もし農作物に被害を与える目的で種をばらまいているのなら、ただのイタズラでは済みません。
ネット上では、
「農業を狙った攻撃では?」
という話まで飛び出しました。
日本にも同じような種が届き、植物防疫所は、
「植えないでください」
と注意を呼びかけています。
騒ぎだけを見ると、
何者かが世界中へ謎の種をばらまいている――。
そんな事件にも見えます。
ところが、調査が進むと話が変わってきました。
まず疑われたのが、先ほど登場したブラッシングです。
「販売実績を作るために、安い種を送りつけていたんじゃないか?」
それなら、知らない人の家へ突然届く理由も説明できます。
ところが受取人を詳しく調べていくと、さらに妙なことが分かりました。
一部の人は、
自分でその種を注文していたのです。
「え? 買ってたの?」

海外の通販サイトで以前注文していた。
海外から発送されるとは知らなかった。
届くまで時間がかかりすぎて、注文したこと自体を忘れていた。
そんなケースまで混ざっていました。
つまり、
「世界中に謎の種が送りつけられている」
という一つの巨大な事件に見えていたものの、
実際には、
いくつもの事情が混ざり合って、
一つの不気味な事件に見えていたのです。
もちろん、正体不明の海外産の種を勝手に植えていいわけではありません。
ただ、最初に想像したような、
「何者かが世界中へ危険な植物をばらまいていた」
という証拠は見つかりませんでした。
謎を追いかけていったら、
最後に出てきたのは秘密組織ではなく、
複雑すぎるネット通販と、注文したことを忘れていた人たちでした。
今度は、箱の中にQRコードが入っている

そして最近は、さらに一段ややこしくなっています。
ある日、知らない荷物が届く。
中には小さな商品。
その横にカードが一枚。
「プレゼントの送り主を確認するには、こちら」
QRコードが印刷されています。
「誰からだろう?」
スマホを取り出す。
カメラを向ける。
ここで止まればいいのですが、
人間というのは、
「知らないプレゼント」
より、
「誰が送ってきたのか分からないプレゼント」
の方が気になります。
QRコードを読み取る。
すると通販サイトや配送会社に似たページが開く。
「確認のためログインしてください」
名前。
メールアドレス。
パスワード。
カード情報。
言われるまま入力してしまう。
これが、QRコードを使ったフィッシング詐欺、
「クイッシング」
です。

ブラッシングと組み合わされた手口について、海外の郵便当局も注意を呼びかけています。
少し前まで、不審な荷物といえば、
「箱の中に何が入っているか?」
を警戒するものでした。
ところが今は少し変わってきています。
箱の中身は、ただの安物でもいい。
本当に触ってほしいのは、
その横に印刷された四角い模様。
荷物を送る。
↓
気にさせる。
↓
スマホを出させる。
↓
あとは偽サイトへ連れていく。
犯人にとって、商品はエサにすぎません。
「じゃあ、知らない荷物にQRコードがあったら?」
とりあえず、
興味本位で読み込まない。
これだけでもかなり違います。
最後に

荷物より気になるもの
もちろん、身に覚えのない荷物が届いたからといって、
全部が詐欺というわけではありません。
家族が注文していた。
以前の注文を忘れていた。
住所を間違えて配送された。
通販会社側のミス。
理由はいくらでも考えられます。
差出人不明だからといって、
いきなり爆発するわけでもありません。
箱を開けた瞬間、謎の粉が舞い上がることも普通はないでしょう。
でも、
知らないイヤホン。
知らない種。
知らないQRコード。
形は違っても、一つだけ共通することがあります。

その荷物には、
ちゃんと自分の名前が書いてある。
住所も合っている。
配達員は迷わず、自宅まで持ってきた。
箱を見ながら、
つい考えてしまいます。
「……これ、誰が送ったんだ?」
でもたぶん本当に気にした方がいいのは、
箱の中身より、
その人が、どうしてここを知っていたのか
ではないでしょうか?

