彼女の最後の秘密【掌編小説】
場面: 病院の一室。深夜、部屋は静かで、唯一の光源はベッドサイドランプ。
登場人物:
- ジュン: 主人公。30代前半の青年。
- ミナ: ジュンの長年の恋人。病に倒れ、余命わずかと思われていた。
- サキ: 看護師。ミナの状態についての真実を知っている。
(静かに、しかし深刻な表情で) ジュン、大事な話があるの。
最後に、全てを打ち明けたいの。
ミナ、何でも言ってくれ。
僕たちの間に秘密なんて要らない。
実は…私たちが出会ったころ、私はもう病気だったの。
あなたとの時間が有限だと知っていた。
でも、あなたに負担をかけたくなくて、病気のことは隠していたの。
(ショックを受けつつも) どうしてそんな大切なことを隠して…。
いや、僕たちは一緒にいるべきだったよ。
(涙を流しながら) ごめんなさい、ジュン。
あなたには幸せになってほしかった。
私の病気があなたの人生を縛りたくなかったの。
(涙をこらえて) ミナ、君のことを想う時間は僕にとって一番の幸せだった。
君がいること自体が、僕の人生を豊かにしてくれたんだ。
ジュン、私のこの告白で、あなたが新しい人生を歩めるように。
私のことは忘れて、前に進んでほしい。
ミナ、君を忘れることなんてできないよ。
君の愛、君の勇気、それが僕を支えてくれた。
君は僕の中で永遠に生き続ける。
(微笑みを浮かべながら) ありがとう、ジュン。
あなたと過ごした時間は、私にとって最高の贈り物だった。
(優しく) 君との思い出は僕の心の中で、永遠に大切にされるよ。
ミナ、愛してる。
二人は手を取り合い、静かな夜に包まれながら、互いの愛を確かめ合う。
その時、看護師のサキが部屋に入る。
すみません、お邪魔しますね。
でも、ちょっと聞いておきたいんですけど、二人ともこんなに感動的なお別れをしているけど、ミナさん、あなたが入院しているのは大した病気じゃないんですよ。
明日には退院できる予定ですから。
えっ、本当ですか?
(笑顔で) ええ、実はそうなの。
でも、ジュンには心配かけたくなかったし、一緒にいる時間を大切にしたかったの。
(冗談めかして) まあ、良かったですね。
次は退院祝いのパーティーを大袈裟に計画してみてはどうですか?(笑)
三人はこの誤解を笑い飛ばし、ミナの病室は明るくなる。
後日
ジュンはアパートのリビングで、
ミナとの写真を手にしている。
そこへサキが訪れる。
ジュン、どうしてる?
ミナがいなくなって、
世界が色褪せたみたいだ
ジュン、もう気づいていると思うけど、
実は…
あの日、ミナと私が君にした話、
全部真実じゃなかったのよ
ああ、知っていたよ。
二人が友人同士だったこともね
ミナの病気は本当は
もっとひどいものだった
でもミナは君に悲しい思いを
させたくなかった
だから、あの芝居を…
あの日、ミナは笑っていたけど、
どこか悲しそうでもあった
そこがずっと、
引っかかっていたんだ
ミナは最後まで君のことを考えていたよ
君が新しい幸せを見つけられるように、と
一瞬の沈黙の後、ジュンは涙を流し始める。
でも、
ミナほどの幸せはもう見つからないよ
彼女の愛があまりにも大きすぎたんだ
君が前を向いて歩いてほしいと
ミナもきっとそう望んでいるよ
二人はしばらくミナの思い出に浸る。
外は雨が降り始め、
部屋の中には深い静けさが広がる。
サキ、ありがとう
ミナのためにも、
もう一度、前に進もうと思う
それがミナも望んでいることだよ
サキが立ち去ると、
ジュンは再びミナの写真を見つめる
彼女の笑顔が今は遠く感じられるが、
その愛だけは永遠に彼の心の中に残る
幕