隣の席の宝物【掌編小説】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
場面: マヤのリビングルーム。マヤとトムが中心に座っている。
(心配そうに)マヤ、本当に大丈夫?
その…時間を巻き戻すやつ、ちょっとやり過ぎじゃない?
(遠くを見つめながら)大丈夫だよ、トム。
ただ、もう一度だけ、あの日をやり直したいだけだから。
(苦笑いで)「ただ」って、もう何回目だよ。
でもさ、毎回、何かを忘れて戻ってくるじゃん。
そうね、最近は愛する人の顔すら思い出せなくて…(ふと)あれ?
私たち、誰の話をしてたっけ?
(冗談めかして)それが問題だよ。
私の超カッコイイ顔も忘れちゃうの?
許せないな!
(笑いながら)ごめん、ごめん。
でも、本当に何か大切なものを失ってる気がして…
(ふざけて)もしかして、私のサイン入りの限定版コミックを忘れた?
それとも、私が世界一の料理人だってこと?
(笑いをこらえながら)うん、そうかも。
トム、君が料理したあの…炭みたいなステーキが恋しいよ。
(うなずきながら)さて、真面目な話をするけど、時間を戻すっていうのは、もうやめにしない?
今を大事にしようよ。
(考え込んで)そうね、多分…あ、ひらめいたわ!
今度は「記憶を保つ方法」を研究しようかな。
(顔を覆いながら)また新しいトラブルの始まりか…。
でも、そうだね、私たちのバカな冗談だけは忘れないでよ。
(ニッコリ)約束。
でも、もし忘れちゃったら…また、トムの最悪な料理を食べることで思い出すわ。
(笑いながら)それは、それでいいかもしれない。
最悪な料理で最高の思い出を作ろうじゃないか。
(笑い合いながら)そうね。
名前もない恐怖よりも、トムの料理の方がまだマシかもしれないわ。
彼らの会話は、どんなに困難な状況でも、ユーモアを共有することで乗り越えられる力を示していた。
幕