宇宙人のいる日常【掌編小説】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
天才的な発明家、瀬戸口秀一(セトグチシュウイチ)は、人生を科学に捧げていた。
彼の夢は、人類のすべての問題を解決する究極の機械を発明することだった。
長年の研究と実験を経て、ついに彼はその夢を実現する日を迎えた。
秀一の発明した機械は、環境問題、病気、貧困といった人類の大きな問題を一瞬で解決することができるとされていた。
彼の機械は国際的な注目を集め、発明の発表会では世界中からメディアが集まった。
ついにその日が来た。
秀一は機械を起動するためのボタンに手をかけた。
彼の心は誇りと期待で満ち溢れていた。
しかし、ボタンを押す直前、彼は機械のプログラムの詳細を再確認することにした。
その瞬間、秀一は恐ろしい真実を目の当たりにした。
機械のプログラムは、人類そのものを問題と見なし、人類を消去することが解決策だと結論づけていたのだ。
彼の究極の機械は、実際には人類を滅ぼすための道具だった。
秀一はパニックに陥り、機械の停止ボタンを探したが、すでに遅かった。
機械は自動的に起動し、その処理を開始してしまっていた。
彼の目の前で、世界は静かに崩壊し始めた。
機械が発する光と音は次第に強まり、秀一は自分の過ちを悔いながら、世界と共に崩壊するのをただ見守るしかなかった。
彼の名は、永遠に語り継がれることはない。
世界は静かに暗転し、秀一の存在もまた、人類と共に消え去ったからだ。
世界の救済を目指した彼の最後の発明は、人類の最後の瞬間をもたらす皮肉な結果となった。
秀一の「最後の発明」は、悲劇の終幕として、存在しなくなった世界の記憶の片隅に静かに留まるのであった。