宇宙の迷子通知【掌編小説】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
風は、過去への扉を開く。
「もしやり直せたら…」
主人公、翔太(ショウタ)はそう願いながら、タイムマシンのレバーを引いた。
彼の目的は明確だった。
かつての恋人、美咲(ミサキ)との別れをなかったことにすること。
彼女の笑顔、涙、そして最後の言葉「ごめんなさい」が、彼の心を今も苛む。
タイムマシンが静かに動き出し、翔太は過去へと旅立った。
過去に到着した翔太は、当時の自分と美咲の関係を観察し、失恋の原因を探る。
彼は自分の行動を変え、美咲へのアプローチを見直す。
そして、ついに別れの日がやってきた。
しかし、今回は違った。
翔太は美咲との別れを避け、彼女を手に入れることに成功した。
「これでいいんだ…」彼はそう思いたかった。
しかし、時は過ぎ、翔太は気付く。
美咲との関係は以前とは異なり、何かが違っていた。
彼女の目にはかつての輝きがなく、翔太自身も何か大切なものを失ったような寂しさを感じ始めていた。
そしてある日、翔太はカフェで一人の女性に出会う。
彼女は、美咲とは全く異なるタイプだったが、翔太は強く惹かれる。
しかし、彼はすでに美咲との関係を選んでいた。
二人の間に生まれた感情は、一瞬の輝きと消えた。
翔太は後悔と共に理解する。
過去を変えることができたとしても、それが必ずしも良い結果をもたらすとは限らない。
彼が選んだ道は、かけがえのない「何か」を彼から奪っていた。
結局、翔太は再びタイムマシンに乗り、過去をそのままにする決意をする。
彼は自分の選択を受け入れ、失った恋を胸に未来へと歩みを進める。
風は再び吹き、タイムマシンは静かに消えていく。
翔太の心には、運命の逆回転の教訓と、失われた恋の記憶が残された。