あなたの体は、本当に光っている!?──科学が見つけた「生命の光」の正体
はじめに

「……人間、光ってますね」
暗い研究室。
一人の男性が椅子に座っています。
部屋の明かりは消され、男性もじっとしたまま。
研究者が特殊なカメラの画面を見つめます。
しばらくすると、
真っ暗だった画面に、ぼんやりと人の形が浮かんできました。
「……顔が光ってる」
冗談ではありません。
人間の体は今この瞬間も、
本当に光を出しています。
ただし、鏡を見ても分かりません。
その光は、人間の目で見える限界よりもはるかに弱いからです。
「そんな光、どうやって撮るの?」
そこで使われるのが、
ごくわずかな光まで拾える高感度カメラです。
といっても、
普通のカメラを少し高性能にしたものではありません。
2009年に人間の発光を撮影した実験では、
カメラのセンサーを「約マイナス120℃」まで冷やしていました。
なぜカメラをそこまで冷やすのか?
実はカメラのセンサーは、
真っ暗な場所でも内部からわずかな電気的ノイズを出します。
ところが今回探しているのは、
それよりさらに微弱な光です。
そこでセンサーを冷やして余計なノイズをできるだけ減らし、
外から光が入らない暗室で撮影します。
しかも、
一瞬では撮れません。

研究では男性を暗闇に慣らしたあと、
約20分間じっと撮影しました。
その間に飛んできたわずかな光を、
少しずつ集めていくのです。
イメージとしては、
夜空の星を長時間撮影するのに少し似ています。
一瞬では真っ暗でも、
長く光を集めれば、
そこにあった弱い光が見えてくる。
そうしてようやく、
人間の顔や胸から出ている光を画像にすることができます。
この極端に弱い光は、
超微弱光子放出(UPE)
と呼ばれています。
名前は難しそうですが、
要するに、
「生き物の体から自然に漏れてくる、ごく弱い光」
のことです。
そして2009年の実験で撮影を続けていると、
もう一つ妙なことが分かりました。
人間は、
一日中、同じ明るさで光っているわけではなかったのです。
※本記事は筆者個人の感想をもとにエンターテインメント目的で制作されています。
「朝より、夕方のほうが光ってる?」

研究者たちは被験者を、
朝から夜まで何度も撮影しました。
午前10時。
午後1時。
午後4時。
午後7時。
午後10時。
撮った画像を並べてみます。
「あれ?」
「午後4時が一番明るいですね」
人間の体から出る光には、
一日の中で変化があったのです。
朝は弱く、
昼から強くなり、
午後4時ごろにピークを迎える。
その後、夜になると再び弱くなりました。

特に発光が強かったのが、
顔です。
頬や額、口の周辺などで光が多く検出されました。
なんだか、
「午後4時、人類は一日の中でもっとも輝く」
と言いたくなります。
ただし、日焼けした肌が光っているわけでも、
体温が高い場所が光っているわけでもありません。
研究者がサーモグラフィーの画像と比べると、
体温の高い場所と、光の強い場所は一致しませんでした。
では、
この光はどこから出ているのでしょうか?
「体の中で、何かが燃えている?」

細胞の中では一日中、
ものすごい数の化学反応が起きています。
僕たちは食べ物から栄養を取り、
酸素を使ってエネルギーを作っています。
その過程で生まれるものの一つが、
活性酸素種、略してROSです。
簡単に言えば、
「酸素から生まれる、反応しやすい物質」
です。
これが脂質やタンパク質などと反応すると、
一部の分子が一時的にエネルギーの高い状態になります。
そして元の状態へ戻るとき、
余ったエネルギーの一部が、
光として外へ出ることがあります。
これが、人間が光る大きな理由の一つだと考えられています。

つまり、
体の中に小さな電球が入っているわけではありません。
細胞が働き続ける中で、
ごく小さな「光の火花」が生まれている。
そんなイメージです。
研究では、皮膚に酸化反応を起こしやすい条件を作ると発光量が増え、
逆に酸化を抑える物質を使うと、光が減ることも確認されています。
ここまで聞くと、一つ気になることがあります。
「じゃあ、生きているときに光るなら……死んだらどうなる?」
研究者も、
同じことを考えました。
「さっきまで光っていたのに」

2025年。
研究者たちは高感度カメラの前に、
一匹のマウスを置きました。
もちろん普通のカメラでは何も見えません。
ところが特殊な装置で長時間撮影すると、
マウスの体からごく弱い光が検出されます。
その後、
マウスの生命活動を停止させ、
もう一度撮影しました。
結果は、
かなりはっきりしていました。
発光量が大きく減ったのです。
「でも、死んだから体温が下がっただけじゃないの?」
そう思うかもしれません。
そこで研究者たちは、
生命活動が停止したあとも、
マウスの体を「約37℃」に保ちました。
温度をほぼ同じにしても、
光は弱くなりました。

つまり、
単純に体が冷えたからではありません。
代謝をはじめとする、
生きた細胞の活動そのもの
が発光に深く関係していると考えられます。
もちろん、
これは「魂が抜ける瞬間を撮影した」という話ではありません。
そんなことは、この実験では分かりません。
ただ、
生きている体では光が強く、生命活動が止まると弱くなる。
そこまでは、
カメラで測れる現象です。
昔の人が「生命」を光で表現したくなった気持ちが、
少しだけ分かる気もします。
「じゃあ、脳も光るの?」

今度は脳の話です。
研究者がラットの脳を調べると、
脳の組織からも超微弱な光が出ていることが確認されています。
さらに神経細胞を活発に働かせると、
発光量が増えるという実験結果も報告されています。
「ということは、考えるたびに脳がピカッと光る?」
少し近いですが、
ここには大きな注意点があります。
神経が活動すると、
エネルギーもたくさん使います。
そのため代謝が増え、
結果として光が増えただけかもしれません。

たとえば、
自動車のエンジンが動くと熱が出ます。
だからといって、
自動車が熱を使って運転手と会話しているわけではありません。
脳の光も同じです。
光が出ていること
と、
光を使って情報を送っていること
は別の話です。
ところが研究者の中には、
さらに大胆な可能性を考える人もいます。
「神経は、光ファイバーにもなれる?」

神経細胞には、
軸索
と呼ばれる細長い部分があります。
簡単に言えば、
神経細胞から伸びた「配線」です。
そして多くの軸索は、
髄鞘(ずいしょう)
という膜に包まれています。
電線の周りにあるカバーのようなものです。
2016年、研究者たちはこの構造をコンピューターで計算し、
条件によっては光を導くことができるのではないか?
と考えました。
イメージとしては、
インターネット回線に使われる
光ファイバー
です。
そこで、
「脳の中には電気信号とは別に、光による通信もあるのでは?」
という仮説が出てきました。
かなりSFっぽい話です。
ただし現在のところ、
脳が実際にバイオフォトンを使って情報通信していることは証明されていません。
「構造上、光を通せるかもしれない」
という段階です。

実際、2026年には、
人間の頭の外側から測った微弱光について、
「本当に脳から出た光なのか?」
という疑問も示されています。
脳から出た光は、
頭皮や頭蓋骨を通る途中でかなり弱くなります。
そのため頭の外で測った光には、
皮膚から出た光が混ざっている可能性もあります。
つまり、
研究者たちはまだ、
「脳の中で何が光っていて、その光に意味があるのか」
を追いかけている途中なのです。
「瞑想すると、もっと光る?」

ここで少し怪しい話が混ざりやすくなります。
ネットでは、
「瞑想するとバイオフォトンが増える」
「感情によって光の色が変わる」
と紹介されることがあります。
ところが研究を見ると、
そんな単純な話ではありません。
小規模な瞑想研究では、
むしろ瞑想中に発光量が低下する傾向が報告されたものもあります。
長期間瞑想をしている人と、
していない人を比較した研究でも、
瞑想経験者のほうが発光量が少なかったという結果があります。

ただし、
参加人数は多くありません。
そのため、
「瞑想すると暗くなる」
と断言できるわけでもありません。
分かっているのは、
体の状態によってUPEが変化する可能性がある、という程度です。
「悲しい人は暗い光」
「幸せな人は美しく輝く」
といったことまで科学で確認されたわけではありません。
「傷つけた葉っぱが、光り始めた」

人間以外の生き物も光ります。
2025年の研究では、
植物も高感度カメラで撮影されました。
研究者が葉っぱに小さな傷をつけます。
すると、
傷ついた部分の発光が変化しました。
さらに植物を高温にさらすなど、
強いストレスを与えても発光量が増えました。
傷つくと、
植物の中でも酸化反応が増えます。
その結果として、
光も増えたと考えられています。

もちろん、
「植物が痛いと叫ぶ代わりに光っている」
という意味ではありません。
ただ、
目には何も起きていないように見える葉の中で、
化学反応は急激に変化している。
その変化を、
高感度カメラなら光として見ることができるわけです。
この特徴を利用して、
植物の病気やストレスを早く発見できないかという研究も行われています。
「人間の光で、病気まで分かる?」

研究者が次に考えることは自然です。
「体調によって光が変わるなら、病気の発見に使えないだろうか?」
実際、
皮膚に紫外線を当てるとUPEが増えることが分かっています。
紫外線によって、
細胞の酸化ストレスが増えるためです。
糖尿病の人と健康な人の発光を比較した研究や、
がん細胞、アルツハイマー病モデルなどを使った研究も行われています。
将来的には、
体を傷つけたり血液を採ったりせず、
体から出るごく弱い光を読むだけで、細胞の状態を調べられる
ようになるかもしれません。

ただし、
今すぐ病院へ行って、
「今日は顔が暗いので病気ですね」
と診断されるわけではありません。
まだ研究段階です。
発光量は、
時間帯や体の場所、環境などでも変わります。
病気だけを正確に見分けるには、
まだ多くの研究が必要です。
「100年前は、タマネギから始まった」

そもそも、
生物が光を出す研究の歴史は意外と古く、
1920年代までさかのぼります。
ロシアの生物学者、
アレクサンドル・グルヴィッチ氏は、
二本のタマネギの根を使って実験をしました。
一本の根の先端を、
もう一本の根へ向けます。
すると、
向けられた側の細胞分裂が増えたと彼は報告しました。
「根から何か出ているのでは?」
グルヴィッチは、
生きた細胞が何らかの放射を出していると考えます。
ところが後の研究者が同じ実験をすると、
うまく再現できないケースが続きました。

当時の測定装置では、
極端に弱い光を正確に測ることも難しかったのです。
研究は長い間、
かなり怪しい扱いを受けました。
それから約100年。
人間の目では見えないほど微弱な光を捉えるカメラが登場し、
僕たちはようやく、
生き物が本当に光を出している
ことを直接見るようになりました。
始まりはタマネギ。
現在は人間の脳や医療応用まで研究されている。
なかなか長い寄り道です。
最後に

「じゃあ、魂も光なの?」
夜。
鏡の前に立ってみます。
当然、
何も光って見えません。
でも特殊なカメラを置けば、
この顔からも今、
わずかな光子が飛び出しています。
「これって、魂の光だったりして」
そう考えたくなる気持ちは分かります。
古い宗教画では聖人の頭に後光が描かれ、
仏像の背後には光背があります。
人間は昔から、
命や神聖さを「光」で表現してきました。
ただし、
バイオフォトンと魂やチャクラを結びつける科学的な証拠は、
今のところありません。
科学が見つけたのは、
もっと地味で、
少し奇妙なものです。

生きた細胞は働き、
酸素を使い、
化学反応を繰り返す。
そのたびに、
ほんの少しだけ光が漏れる。
肉眼では見えない。
触ることもできない。
誰にも気づかれないまま、
僕たちの体は今日も光っています。
たぶん今も、
あなたの頬から、
小さな光子が一つ、
暗闇へ飛び出しているところです。

