小噺ショート
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やりがいの正体【ショートショート】

佐藤直哉(Naoya sato-)
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働く意欲、方向性は未調整

博士は研究室で腕を広げた。
「さあ、見ろ!これが“究極のやりがいブースター”だ!」

机の上にあるのは、ヘルメット型の装置。
怪しく光るランプ、そして『安全』の文字が手書きで貼られている。


無職の男たちは、互いに顔を見合わせた。

「博士、それ本当に安全なんですか?」
「ああ、これを被れば、働くことの喜びで全身が満たされるぞ!」

「博士が試したんですか?」
「いや、私は…ほら、研究を監督する立場だから!」

博士の視線は泳いでいる。
男たちの眉が一斉に跳ね上がった。


それでも装置を装着することになった。
スイッチが入ると、スクリーンに映像が流れ始めた。

  • ひたすら畑を耕す農夫
  • 休む間もなく働くAIロボット
  • 博士がプールサイドでカクテルを飲む姿

「どうだい?やりがいが湧き上がってきただろう?」
博士は満足げに腕を組む。

男たちは装置を外し、拳を握りしめて立ち上がった。
そして口を揃えて叫ぶ。

「湧いたぞ!やる気が!」

「素晴らしい!」
博士は満面の笑みを浮かべる。


「だから、俺たちでお前の職を奪う!」

博士の笑顔が引きつる。

「ちょ、ちょっと待て!やりがいの方向性が違う!」

ABOUT ME
佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
小説を書いていたはずが、いつの間にか「調べたこと」や「感じた違和感」を残しておきたくなりました。
このサイトでは、歴史の中に埋もれた謎や、日常でふと引っかかる“気になる話”をもとに、雑学記事、4コマ漫画、風刺ショートショートとして発信しています。
テーマはちょっと真面目。
でも、語り口はすこし皮肉で、たまにユーモア。
「なんかどうでもよさそうなのに、気になる」
──そんな話を集めて、掘って、遊んでいます。
読んだ人の中に“ひとつくらい、誰かに話したくなる話”が残れば嬉しく思います。
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