宇宙ゴミが語る未来【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
昼下がりの町工場。
新人のハヤシは、ベテランのスズキに恐る恐る尋ねた。
「スズキさん、どうやったら技術が上達するんですか?」
スズキは煙草の煙を吐きながら、じろりとハヤシを見た。
「簡単だ。繰り返せ。それだけだ」
スズキの目に一瞬の輝きを見たハヤシは、その言葉を深く胸に刻んだ。
そして一年後――。
ハヤシは必死に磨き続けた部品を手に、呆然と立ち尽くしていた。
「こんなはずじゃない……!」
完璧な仕上がりにはほど遠い現実に、彼はスズキの元へ駆け込む。
「スズキさん! あのアドバイス、本当に正しいんですか?」
スズキは工具を置き、煙草をもみ消しながらゆっくりと立ち上がった。
「ハヤシ、お前、磨いてたのは何だ?」
「部品ですよ!」
スズキは笑いもせず、ハヤシの目をじっと見た。
「だろうな。でも、俺が言ったのは『技術』を磨けだ」
その一言で、ハヤシの中に雷が落ちた。
だが、すぐに悔しさが込み上げる。
「じゃあ最初から言ってくださいよ!」
スズキは口角を少しだけ上げた。
「そういう奴に最初から教えてやったところで、理解なんかできねぇよ」
ハヤシは返す言葉を探しながらも、何かを掴んだ気がした。
スズキは再び工具を手に取り、静かに呟いた。
「いいか、ハヤシ。職人ってのは、失敗して恥かいて、それを繰り返して初めて自分の形になるんだよ」
ハヤシはその言葉を聞きながら、自分の手の中で光る粗い部品を見つめた。
それが、今はまだ自分そのものに見えた。