ショートショート
PR

見抜かれた天才【ショートショート】

佐藤直哉(Naoya sato-)
<景品表示法に基づく表記>当サイトのコンテンツ内には商品プロモーションを含みます。

自信過剰、観察力に敗北

「これさえあれば、人生が変わる!」
広場に響くミナトの声。
手に掲げられたスピーカーは、陽の光に照らされてどこか頼りなく見えるが、彼の目は熱意に満ちている。

「音楽を聴くだけでIQが50も上がる!僕はこれで凡人から天才になりました!
今じゃ、“奇跡のセールスマン”と呼ばれてます!」

周囲の通行人は半信半疑の顔を浮かべながら足を止める。
その中の一人、杖をついた老人がゆっくりと近づいてきた。

「そのスピーカー、本当にそんな効果があるのか?」
老人は低い声で尋ねた。

「もちろんですとも!」
ミナトは胸を張る。
「これを使えば誰だって成功できます!試してみます?」

老人はスピーカーを手に取り、じっくりと眺め始めた。

  • 表面には細かな傷が無数に走っている。
  • 裏側には見慣れない刻印が彫られている。
  • 見た目とは裏腹に、手に取ると妙に重たい。

「この刻印…どこかで見た覚えがある」
老人は目を細めながら言った。
「確か博物館で見たアンティーク品に似ているな」

ミナトは一瞬表情を強張らせたが、すぐに引きつった笑顔を作り直す。
「そ、それはただの装飾ですよ!ほら、見た目も高級感があるでしょう?」

老人はポケットに手を入れ、銀色のバッジを取り出した。
「警察だ。その“高級感”、どこで仕入れたのか説明してもらおうか」

ミナトの顔は蒼白になり、スピーカーを抱える手が震えた。
それでも必死に笑顔を保ちながら言った。
「いやぁ…さすが警察官!このスピーカー、観察力まで高めるとは!」

老人は冷静に首を振りながら、厳かに言った。
「その観察力、今後の人生で役立てるといいな。たとえば、刑務所の中でな」

ミナトは肩を落とし、小声で呟いた。
「IQより、今は“逃げ足”を鍛える方法が知りたい…」

ABOUT ME
佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
普段は小説家たまにブロガー
物語を生み出す事に楽しみを見出して様々な作品を作り出しています。
特にショートショートのような短い小説を作ることに情熱を注いでいます。
楽しんで頂ければ嬉しく思います。
記事URLをコピーしました