予算の裏側【ショートショート】
楽観主義が成功を呼ぶ?それとも、現実逃避の宴?
会議室は賑やかで、タカシの声が高らかに響く。
「皆さん、今日は新しいプロジェクトの提案をします!」
彼は自信に満ちた笑顔で周囲を見渡し、聴衆を引き込む。
拍手が巻き起こる中、タカシは続ける。
「我々の目標は、業界シェアを30%増加させることです!」
参加者の一人が興奮気味に言う。
「素晴らしい!具体的にはどう進めるつもりですか?」
タカシは胸を張り、ホワイトボードに計画を描き始める。
「まず、SNSを活用したマーケティング戦略を立てます。次に、ユーザーの声を反映させた新製品を開発し、ターゲット層を広げるんです」
その様子を見て、ミツオは静かにメモを取りながら心の中で疑念を抱く。
「本当にそんなに簡単に行くものなのか…」と。
発言の機会を待ちながら、彼の心の葛藤が募る。
会議が進むにつれ、タカシは提案を重ね、熱心にプレゼンを続ける。
「さらに、成功を祝うパーティーも計画しています。チームの士気を高めるために、楽しむことも大切です!」
その瞬間、参加者から拍手が起こる。
ミツオは思わず手を挙げ、「ただ、予算は限られています。マーケティングにどれだけ費用をかけられるか、慎重に考える必要があると思います」と声を上げる。
タカシは笑顔を崩さず、「実は、先週、我々の提案が取締役会で評価されて、追加予算を獲得できたんです!」と答える。
その言葉に、会議室は驚愕の静寂に包まれる。
思わず息を呑む音が響く。
ミツオは肩をすくめ、小さな声で呟く。
「この会議、果たして何の意味があったのか」
彼の言葉に、周囲の人々も一瞬静まり返る。
だが、タカシの楽観的な姿勢は崩れない。
「大丈夫、皆で成功を掴むんです!」と、彼は笑顔で締めくくった。
この瞬間、ミツオの心には疑念と同時に、タカシの熱意に少しだけ引き寄せられる感情が芽生える。
「もしかしたら、彼の楽観主義にも意味があるのかもしれない…」と思い始める。
会議が終わる頃、ミツオはタカシの発言を思い返しながら、今後の戦略を練り直す決意を固めた。
結果的に、その「無意味さ」が思わぬ成功を呼び込むとは、誰も予想できなかった。