契約パートナー【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
「俺についてこい!」とタカハラが自信満々に叫んだ瞬間、会議室は静まり返った。
部下たちは互いに顔を見合わせ、誰一人として動かない。
タカハラは少し焦りながらも、リーダーらしく振る舞おうと「おい、どうして動かないんだ?」と疑問を投げかけた。
すると、前列に座っていたヒラノが手を挙げ、「タカハラさん、どこに行くか教えてもらってないので…」と遠慮がちに言った。
「あ…そうか」と、タカハラは瞬間的に硬直したが、すぐに「いや、今考えてるところだ!」と、いつものように強気で言い放った。
しかし、部下たちは明らかに冷ややかな目を向けてくる。
そんな中、一番若いオオバが手を挙げ、「それなら僕が行き先を決めます。タカハラさんは、リーダーとして僕をサポートしてください」と真面目な顔で言った。
タカハラは心の中で「俺リーダーじゃなかったのか?」とつぶやき、ふと自分の役割を見失いかける。
部下たちは、オオバの提案にしたがって先に進み始めた。
タカハラはその様子をぼんやり眺め、ぽつりと呟いた。
「結局、俺がついていく側なのか…」