ショートショート
PR

理論的な見送り【ショートショート】

佐藤直哉(Naoya sato-)
<景品表示法に基づく表記>当サイトのコンテンツ内には商品プロモーションを含みます。

見送ったのは相手か、自分か?

「最初に出会った相手は選ぶな。その人を見送って、次に現れる人が本当の相手だ」

友人がそんな妙な理論を持ち出した時、俺は「それは面白い」と半ば冗談半分で聞き流した。

だが、その理論が頭から離れない。

過去の恋愛を振り返ってみても、確かに最初に飛びついた相手は大抵失敗だった。

それから俺は、「次こそ本命だ」と信じ、最初に出会った人をすべてスルーしてきた。

心の中では「俺の選択は完璧だ」と誇りに思いながら。

しかし、待てど暮らせど次の「本命」は現れない。

俺の理論が間違っているはずはない。

だが、焦燥感が広がっていく。

そして、公園で猫を抱いた女性に出会った。

「これが運命だ!」と心の中で叫んで、意気揚々と声をかけた。

「猫、かわいいですね」

すると彼女はにっこり笑って、「この猫、賢いのよ。誰を信じるかよく分かってるの」と言い残して立ち去っていった。

俺はしばらく立ち尽くし、猫の残像を見つめながら思った。

「俺が見送られる側だった…か」

ABOUT ME
佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
普段は小説家たまにブロガー
物語を生み出す事に楽しみを見出して様々な作品を作り出しています。
特にショートショートのような短い小説を作ることに情熱を注いでいます。
楽しんで頂ければ嬉しく思います。
記事URLをコピーしました