何かに追われていた午後【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
俺は数々のヒット作を手掛けてきたゲームデザイナー。
だけど、今、机の上に広げられた一枚の紙と、迫りくる締切のプレッシャーに苛まれている。
「面白いゲームの4つの条件」とだけ書かれたその紙に、ペンを走らせる。
「1. 誰でもすぐに理解できるシンプルなルール」
「2. 達成感をもたらすこと」
「3. 想像力を掻き立てるストーリー」
「4. 勝敗がフェアであること」
ここまでは良し。
だが、もう一つの条件が何か足りない。
俺は頭を抱えながら考える。
「5. 中毒性があることだ!」
その瞬間、部屋の明かりが急に点滅し始める。
不気味さを感じ、振り返ると、そこには俺がデザインしたキャラクターたちが、現実世界に浮かび上がっていた。
彼らの不気味な笑みが俺をじりじりと追い詰める。
「な、なんでお前らがここに?」
「お前が一番重要な条件を忘れたからだよ」
彼らのリーダーが冷ややかに答えた瞬間、俺は周囲を囲まれ、逃げ場を失った。
「最も重要な条件、それは――プレイヤーが二度と逃げられないことだ」
その言葉を最後に、俺の意識は暗闇の中に吸い込まれていった。
目を覚ますと、俺は自分が作ったゲームの中に囚われていた。
そして、永遠にそこから脱出できないと悟った瞬間、俺は心の中で叫んだ。
「ちょっと待て!こんな条件、俺が決めた覚えはないぞ!」