メンタルヘルス相談窓口【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
洞窟に閉じ込められて三日目。
水も食料も尽き、ヤマダは体力の限界を感じていた。
壁にもたれて目を閉じると「これで本当に終わりか…」という思いが浮かんだ。
そのとき、ポケットに何かが当たる感覚があった。
取り出してみると、それは小さなチョコレートだった。
妻が「非常食に」と持たせてくれたものだ。
ヤマダは苦笑いを浮かべる。
「これが俺の最後の食事か…」
ヤマダは慎重にチョコレートを口に入れると、その甘さが口いっぱいに広がった。
少しだけ力が戻るのを感じ「まだ終わりじゃないかもしれない…」と心にわずかな希望が灯る。
ヤマダは立ち上がり、洞窟の奥へと歩き始めた。
しばらく進むと、微かな風を感じた。
「もしかして出口が…?」
期待に胸を膨らませて進むが、すぐに行き止まりに突き当たる。
無情にも冷たい岩壁が彼の前に広がっていた。
「やっぱり、こうなるか…」
ヤマダは肩を落とし、再びポケットを探るが、何も見つからない。
ため息をついて振り返ると、暗闇の中でかすかな光が見えた。
「光か?」
ヤマダは希望を抱いてその方向に向かうが、近づくとそれがチョコレートの包み紙の反射だと気づく。
ヤマダは苦笑し、包み紙を壁に投げつけた。
包み紙は静かに舞い、闇に消えていった。
しかし、その包み紙が岩の隙間に滑り込むと、隙間から微かな光が漏れた。
それは確かに出口へと続く道を示していた。
しかしヤマダは、疲労と絶望に心を支配されて、それに気づかなかった。
「希望なんて、こんなものか…」と呟き、ヤマダはその場に崩れ落ち、瞼を閉じた。
出口への道はほんの数メートル先にあったが、彼はもう進む気力を失っていた。