ショートショート
PR

楽観と悲観の果てに【ショートショート】

佐藤直哉(Naoya sato-)
<景品表示法に基づく表記>当サイトのコンテンツ内には商品プロモーションを含みます。

信じた道の先に待つのは、同じ行き止まり

「未来ってのは、信じる者だけに微笑むんだよ!」

タナカは今日もその根拠のない自信を見せつけていた。

資料なしでプレゼンに挑む彼の姿は、まるで冒険家のようだ。

彼の哲学はシンプル。

「失敗しても、次があるさ」

それが彼のモットーだった。

一方、ナカムラは険しい顔つきでタナカを見つめていた。

「そんな無計画で本当にうまくいくのか?」

彼の問いかけは真剣そのもの。

山積みの資料は、彼が全てのリスクを考え、どんな質問にも答える準備をした証だった。

しかし、その準備は、彼を過剰なまでの慎重さへと駆り立てていた。

プレゼンが始まる。

タナカは自信満々で軽快に話し始め、聴衆を笑わせる。

しかし、具体的な計画がないことが明らかになると、聴衆の態度が冷え込み始めた。

「具体的にはどうするんですか?」という質問に、タナカは「ま、その時に考えるさ!」と楽観的に返答したが、その返事は誰の心にも響かなかった。

ナカムラが登壇する。

彼のプレゼンは緻密で、完璧を追求した内容だった。

彼はすべての質問に対して的確に答えたが、その過剰なまでの慎重さが聴衆を疲れさせていた。

彼の声が次第に単調になり、聴衆の中には居眠りを始める者も現れた。

プレゼンが終わった後、タナカは「次があるさ!」と無邪気に笑い、ナカムラは黙って資料を片付け始めた。

だが、彼の表情には落胆が滲んでいた。

数年後、タナカは新しいプロジェクトに再び挑戦していた。

彼はこれまでの失敗をまるで気にすることなく、同じ楽観主義を持ち続けていた。

一方、ナカムラは別の職場で、さらに完璧な準備を重ね続けていた。

しかし、彼の心の中には常に失敗の恐怖があった。

そして、二人はそれぞれの道を進み続けた。

タナカは再び笑い、ナカムラは再び考え続けた。

彼らはどちらも異なる道を歩んでいたが、最終的にたどり着いた場所は同じ墓場だった。

そこに刻まれた言葉は一つ。

「努力は報われる…かどうかは運次第」

ABOUT ME
佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
普段は小説家たまにブロガー
物語を生み出す事に楽しみを見出して様々な作品を作り出しています。
特にショートショートのような短い小説を作ることに情熱を注いでいます。
楽しんで頂ければ嬉しく思います。
記事URLをコピーしました