自由という名の檻【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
その国の人々は、まるで毎日が雨の日のように、不機嫌そうな顔をしていた。
笑顔なんて見たことがない。
彼らの間では、他人の成功や幸せを妬むのが当たり前になっていた。
誰かが新しい家を買えば「どうせローンで首が回らなくなるんだろう」と冷たく笑い、新しい仕事に就いた人には「長続きするはずがない」と影で囁く。
ある日、一人の若者が街の中心で演説を始めた。
「僕たちの不幸の原因は他人への嫉妬なんだ!互いに励まし合い、喜びを分かち合おうよ!」
群衆は一瞬静まり返ったが、すぐに嘲笑が広がった。
「理想論で何が変わるってんだ?」
それでも若者は諦めなかった。
「僕たちの不幸は自分たちで招いているんだ。心を変えれば、この国は幸せに満ちるんだ!」
その言葉に、一瞬、群衆の中に動揺が走った。
しかし、次の瞬間、誰かが叫んだ。
「あいつは俺たちを馬鹿にしてるんだ!」
その瞬間、群衆は怒り狂い、若者に向かって石を投げ始めた。
若者が倒れると、人々は彼の遺体を囲みながら言った。
「あいつは一番不幸せだったな。いや、本当に幸せだったのかもな」
最後に、一人の年配の男が静かに涙を流していた。
しかし、その涙の意味を理解する者はいなかった。