小噺ショート
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増強装置の代償【ショートショート】

佐藤直哉(Naoya sato-)
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進化の代償、あなたはその魅力に抗えますか?

キムラはいつも通り、デスクに山積みの書類と格闘していた。

上司からの無理難題、同僚との競争、果てしない残業。

心も体も限界に近づいていた。

そんなある日、社内メールがピコンと音を立てて届いた。

「新しい増強装置が導入されます」という文字が躍る。

説明会に参加したキムラは、その驚くべき機能に目を見張った。

どんな人でも能力を飛躍的に向上させるというのだ。

「これなら、俺も…」

キムラは早速、増強装置を腕に巻いてみた。

スイッチを押すと、頭が冴え渡り、体力も倍増する感覚が襲ってきた。

上司からの無理難題も瞬く間に片付き、同僚たちからも「おぉ、キムラすげぇ!」と一目置かれるようになった。

しかし、増強装置の効果は長く続かなかった。

数時間後には急激な疲労感が襲い、元の状態に戻ってしまう。

それでもキムラはその効果に魅了され、装置を手放すことができなかった。

昼夜問わず、休むことなく装置を使い続ける日々が続いた。

数週間が過ぎ、キムラの姿は見る影もなくなった。

やつれた顔に疲れ切った身体。

しかし、それでも彼は装置を手放さなかった。

増強装置を使えば、また前のようにできる。そう信じたのだ。

ある日、キムラはついに倒れた。

増強装置が彼の体力と精神を限界まで引き出し、そして破壊したのだ。

誰よりも早く昇進したキムラは、誰よりも早く消耗していったのだった。

後日、会社は再び「新しい増強装置が導入されます」と通知を出した。

社員たちは前例を知りつつも、その魅力に抗えず新たな犠牲者を出し続けるのだった。

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佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
小説を書いていたはずが、いつの間にか「調べたこと」や「感じた違和感」を残しておきたくなりました。
このサイトでは、歴史の中に埋もれた謎や、日常でふと引っかかる“気になる話”をもとに、雑学記事、4コマ漫画、風刺ショートショートとして発信しています。
テーマはちょっと真面目。
でも、語り口はすこし皮肉で、たまにユーモア。
「なんかどうでもよさそうなのに、気になる」
──そんな話を集めて、掘って、遊んでいます。
読んだ人の中に“ひとつくらい、誰かに話したくなる話”が残れば嬉しく思います。
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